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「イノベーターシップ」による事業創造

理想とする未来を構想し実現する力、イノベーターシップとは?

第1回:多摩大学大学院 教授/研究科長 徳岡 晃一郎 氏

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「思いのマネジメント」でイノベーターシップを育む

徳岡晃一郎

——イノベーターシップを高めるためには、確かに個人の意識づけが重要であることがよくわかりました。しかし、それを組織として支援し、活性化させていくためにはどうすればよいのでしょうか。

徳岡:
 多くの企業では成果主義に基づく管理手法が主流になっています。確かに以前日本が軽視してきた成果へのコミットメントを明確化し、合理化することに成功しました。しかし、一方で数字至上主義に陥り、イノベーションの原動力である自発性を損ねている恐れがあります。

MBB(思いのマネジメント) 図表2. イノベーターシップを実現するマネジメント:MBB「思いのマネジメント」 そこで、私たちがイノベーターシップを育むために有効なマネジメントとして重要だと考えているのは、「思いのマネジメント(MBB:Management by Belief)」です。つまり、仕事や人生に向き合う強い思いを、個人または組織として認識し共有することで自立性を養い、自発的な発展を図ろうというものです。具体的には、個人についてはセルフコーチングなどで自身の「思い」を育み、対話を深めて表出化し、さらに実践の中から強化・正当化し、さらに他者と共有させていきます。また、組織も同様のアプローチを行います。

——実際にはこうしたMBBを実践する企業は増えてきているのですか?

徳岡:
 私が知る中では、日産自動車やスターバックス、富士通、田辺三菱製薬、参天製薬など、多くの企業で始まっています。テルモ、ソニーなども関心を持ってくれています。

——個人としてMBBを実践し、イノベーターシップを育むことは難しいのでしょうか。

徳岡:
 もちろん、一人でも自身の「思い」を育み、共有する方法を考えるといった手法でトレーニングすることは可能です。たとえば、現在の仕事以外の仕事をシャドーワークとして「自分でつくり、勝手にやる」ことから、自分なりに「世界を変える」ことの方法と価値に気づくかもしれません。たとえば、「現在の仕事をより良くするために英語を学ぶ」という発想も、「英語を学ぶとこんなことができる」と逆に考えてみると新たな可能性が広がります。

 ただ一人ではこうした気付きにうとくなり、時に独りよがりになることも少なくありません。できれば、適宜的確なアドバイスを与えてくれるメンター的な存在があれば理想的でしょう。

 実際、多摩大学大学院のMBAコースに通ってくる社会人の多くは、こうした「シャドーワーク」について、現在の仕事を効率的に進めるためというより、次のステップの燃料にするためと言っています。そうした共通の問題意識を持つ人たちの集団の中で意見を交換し、共有しあうことも、イノベーターシップの醸成には大きく貢献するといえるでしょう。

——とはいえ、まだそこまで意識が到達していない、「なんとなくこのままでいいのかな」と思っている人も多いと思います。

徳岡:
 「まだわからない」状態だからこそ、何か疑問を感じたらまずは飛び込んで、試行錯誤することが大切です。イノベーションは起こそうと思って起きるものでもありません。登り始めた山が結果として登るべき山だったということは、往々にして多いもの。新たな視点を得て、今の仕事を見つめなおした時、そこにイノベーションの端緒を見出すかもしれません。ぜひ、イノベーターシップの醸成を目指し、日記などを用いたセルフコーチングから始めてみてはいかがでしょうか。

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