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「イノベーターシップ」による事業創造

理想とする未来を構想し実現する力、イノベーターシップとは?

第1回:多摩大学大学院 教授/研究科長 徳岡 晃一郎 氏

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「イノベーターシップ」を構成する5つの力とは?

「イノベーターシップ」の5つの力図表1. 「イノベーターシップ」の5つの力

——真のイノベーションの鍵となる「イノベーターシップ」をより詳しく定義するとすれば、どのような力から成り立つのでしょうか。

徳岡:
 そうですね、因数分解してみると分かりやすいでしょう。私はイノベーターシップを構成するのは、次の5つの力だと考えています。(図表1)
 まず最も重要なのは、未来を構想するビジョン構想力です。たとえば「貧困や戦争がない社会」といったように、共通善に基づきながらも単なる社会通念ではなく、自分の内から湧き出てきた信念として昇華させる力が必要です。独りよがりにならず、信念を得るためには経験や教養を蓄え、人と意見を交換し、自ら深い思索を行うことが求められます。

 そして、その構想を実現するために重要なのが、経験や知識に基づいて適時適切な判断ができる実践的な知恵、すなわち実践知です。たとえビジョンがどんなに素晴らしくとも、実現までには多くの不条理がつきまといます。そこにしたたかに対処し、いかに人や運を引き寄せていくか。自ら「行動力」をもって動き、適宜「判断力」で方向づけ、そして「コンセプト力」で他者を感動させて前へと進める。その3つの力が鍵になるでしょう。

 この実践知が不条理に対してどう判断し作戦を立てるかという理性的な力だとすれば、突破力は実際に動かしていく力です。ヒト・モノ・カネのリソースがなくても、英語ができなくても、何とかしていく力。特に難しい障壁は「しがらみ」かもしれませんね。既に出来上がっているものを壊してまでも……と躊躇することは誰にでもあるでしょう。しかし、その壁を若さや体力、気力などで突破していく。そのためには「決断力」や「度量」、「フレキシビリティ」が必要です。

——なるほど、ビジョンを描き、戦略を練り、実現させていく。しかし、こうした力を身につけるのは、なかなか難しいことかもしれません。

徳岡:
 いや、ある意味で気付きと腹のくくりさえあれば、誰でもイノベーターになりうる可能性を秘めています。たとえば、構想力についても、漫然と仕事をしていては身につかない。「何のために働くのか」「どうしたら問題が解決するのか」常に意識することで鍛えられるわけです。

 そういう意味で、これらを支える力としてπ型ベースの知見場づくり力もイノベーターシップの重要な要素といえるでしょう。π型ベースはその字のごとく、複数の専門分野(縦線)と幅広い教養(横線)を併せ持つ状態です。問題が複雑化し、一分野では解決できなくなっている今、深く広い知のスキルセットはイノベーターにとって不可欠な力です。また、一人では網羅できない知をチームで補いあい、協力し合える「場」を作る力も欠かせません。自分と異なるバックグラウンドや知識を持つ人とつながり、共感し合い、的確にコミュニケートできる力はもちろん、信頼され、人を惹きつける人間的な魅力を育むことも必要でしょう。

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「思いのマネジメント」でイノベーターシップを育む

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