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入山章栄教授が語る、日本企業のイノベーション創出を阻む「組織の“壁”」の乗り越え方

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 企業におけるイノベーションの実践が求められる中、現場では「新規事業開発を担う人材が不足している」「組織から良質なアイデアが出てこない」など、事業そのものよりも、むしろ組織の仕組みや風土に関する課題が多く聞かれる。そうした課題が、なぜ、どのようなメカニズムで発生しているのか。9月15日に開催されたInnovation Meeting 2022では、「イノベーション創出を阻む、組織の『壁』の乗り越え方」と題し、早稲田大学ビジネススクール 教授の入山章栄氏が講演を行った。また、株式会社ビザスク 執行役員の宮崎雄氏との対談、質疑応答の様子も紹介する。

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日本企業に「組織の壁」ができる3つの理由

 イノベーションの源泉となるものとして、入山章栄氏が提唱する「知の探索」がある。イノベーションが「既存の知と知の組み合わせである」ゆえに、目の前の知識のみでは新しいものを生み出すことができない。その原因にもなっている「組織の壁」がどのようにイノベーション創出を阻むのか。それを紐解き、本質的な要因を理解することが重要だという。

 そもそも、なぜ壁ができるのか。入山氏は、次のような3つのメカニズムがあると語る。

1.社会的正当性

 社会学の進化理論から見た場合、ビジネスとして確立していくには、「社会的正当性」が必要になる。つまり、正しく事業活動を行い、法令を遵守し、失敗・欠損品がないという評価を受けなくてはならない。そのためには、組織を別部隊にわけて専業化し、間違いなく求められることを遂行する方が望ましい。企業は生まれたときから社会的正当性を重視するために、壊す意図が働かなければ部門の壁ができるのは必然というわけだ。

2.経路依存性

 事業が複雑になればなるほど、どこかを変えると影響範囲が広がってしまいがちとなる。そのために部分的な変化を好まず、お互いに不干渉をよしとする空気が生まれてしまう。その結果、どんどん壁は厚くなり、壊すことが難しくなる。たとえば、ダイバーシティを導入しようとしても、新卒一括採用やメンバーシップ型雇用、評価制度などを変える必要があるために壁を越えることが億劫になっていた。特に日本は80年代に大成功した製造業・現場主導モデルを「経路依存性」で今も残している。既存製品を小型化・低価格化・高品質化して製造・販売するには、工場で同質な労働力を同時間、同作業で働かせ、失敗を減らすことが重要となる。イノベーションに最も向いていないモデルといえるだろう。

3.制度理論

 会社や部門など、あらゆる場に「常識」とされるものがあり、そこから逸脱するなど考えることすらなくなる。実は会社で常識とされていることの殆どには大きな意味はなく、時に世間の非常識であることも少なくない。しかし、そうしたことに対しても、人は疑問を覚えることなく、日々を生活してしまうようになる。それは脳の許容量でもあり、人間の思考のクセともいえるだろう。

 これらの壁を超えて、新しい知を得られるような場をつくることがイノベーションには必須となる。しかし、これら3つの理由によって阻まれている壁は相当に厚く、そう簡単に破られるものではない。すると、入山氏はその最も簡単な方法として「会社を辞めること」を挙げ、「部長も課長も、すべて経路依存性の只中にいて、全体を変えられるわけではない。経営がすべての問題であり、壁が存在するのは経営の責任」と語る。

 「終身雇用で守られているのは社員ではなく会社。メンバーシップ雇用のマインドセットしか持たないために、ずっといることが“常識”になっている。組織側はそれを逆手に取って、無駄な社命を出したりする。その典型的な例であるドラマの『半沢直樹』シリーズのように、優秀な社員が酷い会社を辞めないのが一番の元凶だ」と入山氏は強調した。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

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