ポケトークにおける「コロナ禍の壁」
携帯翻訳機のポケトークは、2017年12月に初代ポケトークがリリースされ、ポケトークW(2018年)やポケトークS(2019年)、ポケトークS Plus(2020年)とラインナップを拡充してきた。2021年にはPC用ソフトウェアとして「ポケトーク字幕」(無料版)を、2022年には「ポケトーク字幕」(有料版)をリリースする。「ポケトーク字幕」は、リモートワークでの多言語会議などにおいて、話したことを翻訳し、画面に字幕として出せるソフトウェアだ。さらに2022年には、AndroidやiOS用として「ポケトークアプリ」(有料版)をリリースしている。
記者会見ではコロナ禍でのビジネス環境が語られた。ポケトークはリモートワーク環境下で、多言語でのオンライン会議など用途が拡がっているが、その重要な利用シーンは「観光」であろう。
日本政府観光局(JNTO)の調査[1]では、2003年から2021年までの「訪日外国人旅行者数」と「出国日本人数」が報告されている。2019年と2020年/2021年の比較がわかりやすい。「訪日外国人旅行者数」は、2019年が3,188万人だったのに対して、2020年は412万人、2021年は25万人となっている。同様に「出国日本人数」は、2019年が2,008万人だったのに対して、2020年は317万人、2021年は51万人と大幅に減少している。
2022年2月、ソースネクストの子会社として「ポケトーク株式会社」が設立され、ソースネクスト創業者の松田氏自身が代表取締役社長兼CEOに就任する。上記のように「携帯翻訳機のポケトーク」は順調に推移したが、コロナ禍による観光客の激減により打撃を受ける。しかし、リモートワーク需要などに対応し「ポケトーク字幕」などをリリースする。そのタイミングでの分社化となった。
ポケトークは、「言葉の壁をなくす」をミッションに掲げ、相手の言葉を話せなくても互いに自国語のまま対話でき、深くわかり合える世界の実現を目指して「ポケトーク」シリーズを世界中で展開している。分社化でさらに、さまざまな「言葉の壁」に対して事業や製品で課題解決を図りたいという。では松田氏は、言葉の壁をどのように捉えているのだろうか。
[1]日本政府観光局(JINTO)「訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移」(観光庁:訪日外国人旅行者数・出国日本人数)