ガートナージャパンは、世界的なインフレ/景気後退が日本企業に与える変化や、IT投資への影響に関する調査結果を発表した。
調査は、2022年8月に日本国内の企業でITを利用する、あるいはIT導入に際し決定権がある企業内個人を対象に実施。自社のビジネス成長にとって脅威となる外部環境要因(複数回答可)を尋ねたところ、5割以上の回答者がグローバルなインフレ圧力(「長期的で、制御不能なグローバルなインフレ[原材料・製品/サービス価格上昇]圧力」)と景気後退(「グローバル/あるいは地域的な景気後退」)を選択し、グローバルでの経済環境の変化が日本企業にも影響を及ぼしていることが明らかになったという(図1参照)。
同社のプリンシパル リサーチャー 成澤理香氏は、「IMFの『World Economic Outlook Database, October 2022』によれば、日本における2022年のインフレ率(消費者物価指数平均値の前年比上昇率)の見通しは1.989%であり、G7の中では最も低い状況です。その一方で、今回の調査結果からは、日本企業はグローバルの経済環境の変化を敏感に脅威と捉えていることが示されています」と述べている。
同調査では、現在のマクロ経済の不確実性(市場、グローバルなインフレ、利率など)に対し、経営企画やCFO/財務部門から何らかの対応を求められているかについても尋ねている(複数回答可)。その結果、選択肢の中でも「集中的な業務改善」「支出の削減」に回答が集中し、それぞれ回答者の52%、51%が選択した(図2参照)。
成澤は以下のように述べているという。
「今回の調査はIT部門だけでなくユーザー部門からの回答者も占めているため、『支出の削減』が、必ずしもIT支出の削減につながるわけではないと考えられます。むしろ、グローバルでのインフレや円安の影響が強まる中、ITの活用により支出の削減につながる施策を積極的に取り入れようと考える企業も多いでしょう。
一方で、IT投資については、『集中的な業務改善』に該当するような短期的な投資は受け入れられやすいものの、成果が出るまでに時間がかかる戦略的な取り組みについては投資を削減させたと回答している割合が、増大させた割合よりも上回っていることも明らかになっています。このことは、IT投資の優先順位に変更が起こっている可能性を示唆しており、デジタル・トランスフォーメーションのような長期的な取り組みについても、今後企業において投資の優先度が下がる可能性が考えられます。しかしながら、ビジネスのIT依存度がこれまでになく高まる中、成長や変革につながる投資を抑制することは将来的な企業の存続そのものを揺るがしかねないリスクを含んでいます。日本企業は、例えばコンポーザブルなソリューションを活用するなど、コスト効率を上げつつアジリティを高めることを意識することで景気回復後に後れを取らない投資戦略を取るべきです」