アクセンチュアは、世界のテクノロジートレンドに関する調査レポート「Accenture Technology Vision 2023(以下、テクノロジービジョン2023)」を発表した。
同レポートでは、現実空間とデジタル空間が密接につながり合っていく中、ジェネレーティブAIをはじめとした先進的なテクノロジーがビジネスの新時代を切り開きつつあることを明らかにしている。
調査にあたり、研究機関、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業に在籍する25名以上の有識者で構成される外部諮問委員会から知見を収集。同時に、アクセンチュア・リサーチは、日本を含む世界34ヵ国、25の業界にわたる4,777人の上級役職者や役員を対象に調査を実施したという。調査期間は2022年12月~2023年1月。
今回のレポートでは、「アトムとビットが出会う時 - 新たな現実世界の礎を築く(When Atoms Meet Bits: The Foundations of Our New Reality)」と題し、企業が事業の再創造を加速させようとする中で、現実とデジタルの融合を促すテクノロジーのトレンドを定義している。
アクセンチュアのテクノロジー担当グループ・チーフ・エグゼクティブであるポール・ドーアティ(Paul Daugherty)氏は、次のように述べている。
「今後10年間の世の中を形作るものは、クラウド、メタバース、AIという3つの主要なテクノロジートレンドであり、こうしたトレンドによってデジタル空間と現実空間の垣根は総じて取り払われていくでしょう。ジェネレーティブAIが広範にインパクトをもたらす一方で、データ活用や人材育成、ならびに自社特有のニーズに合わせた基盤モデルの構築には多大な投資が必要となることから、企業のリーダーは、自社の企業理念の実現に向けて今すぐ取り組みを開始する必要があります」
ChatGPTの急速な浸透により、人間の能力を拡張する技術としてジェネレーティブAIが注目されている。アクセンチュアでは、全労働時間の40%において言語ベースのAIによるサポートや補強が組み込まれると予測しているという。今回の調査では、経営幹部の98%が「今後3~5年の間にAI基盤モデルが自社の戦略において重要な役割を担う」と回答した。
テクノロジービジョン2023では、現実とデジタルが融合した新たな「共有現実(Shared Reality)」を創り出す上で重要となる4つのテクノロジートレンドを定義したという。
ジェネレーティブAI(Generative AI)
企業経営層やIT担当幹部の98%が、「ジェネレーティブAIを人間の能力を拡張するための伴走者、クリエイティブパートナーやアドバイザーとして活用することで、クリエイティビティやイノベーションが大幅に進展する」と回答し、95%が「ジェネレーティブAIにより企業におけるインテリジェンス活用の新時代が到来しつつある」と回答したとしている。
デジタルアイデンティティ(Digital identity)
デジタル上のユーザーやアセットを認証する機能は、デジタル空間と現実空間を行き来するための基盤として欠かせない。今回の調査では、85%がこうした機能の構築は「単なる技術的な課題ではなく、戦略的な優先事項である」と回答しているという。
私たちのデータ(Your data, my data, our data)
企業がデータについて理解しない限り、AIの潜在価値を最大限に引き出すことはできない。必要なことは、データのサイロ化を解消し、自社のデータ基盤を現在の技術を活用して刷新することだとしている。今回の調査では、90%が「業界を超えて、データの透明性が競争上の重要な差別化要因になっている」と回答した。
フロンティアの果てへ(Our forever frontier)
サイエンス領域とテクノロジー領域では、相互に進化を促し合いながら、双方向にフィードバックを繰り返すスピードを速めているという。今回の調査では、75%が「サイエンスとテクノロジーの組み合わせは世界が直面している深刻な社会課題の解決に貢献しうる」と回答したとしている。
アクセンチュアは、全社横断型のチーム「Generative AI and Large Language Model(LLM)Center of Excellence」を創設。同チームでは、ジェネレーティブAIの専門家1,600人が所属するほか、アクセンチュア全体で40,000人を超えるAIやデータの専門家が有する知見や経験を活用するという。また、同社はジェネレーティブAIや大規模言語モデルに関する調査結果をまとめたレポート「A New Era of Generative AI for Everyone」を発行し、経営幹部がジェネレーティブAIを活用して創造的破壊をもたらすための実践的な知見を提供していると述べている。