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Turing徳地氏に聞く、完全自動運転EV量産までの道筋──産業変革で羽ばたくスタートアップの野望

第12回 ゲスト:Turing 徳地佑悟氏

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 「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、自動運転EVを世界に届けるために邁進するTuring株式会社。レベル5の完全自動運転の実現を目指す同社は、既存の自動車産業をどう捉え、未来に向けてどのような戦略を思い描いているのでしょうか。自動運転EV市場の近況、そして現状の課題と展望を、同社 車両開発部 部長の徳地佑悟氏にお聞きしました。聞き手は株式会社スマートドライブ 取締役 元垣内広毅氏と、同社CPOの小山純氏です。

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「完全自動運転×EV×乗用車」に見出した新産業の可能性

元垣内広毅氏(以下、元垣内):Turingさんの資料を拝見すると、創業は2021年8月で、その4ヵ月後には既存の車を改造し、私有地を周回する自動運転車のプロトタイプを走らせています。さらに、創業から1年後の2022年8月には公道での実証実験を実施するなど、そのスピード感には驚かされるばかりです。徳地さんは、現在の自動車業界の潮流をどのように捉えられているのでしょうか。

徳地佑悟氏(以下、徳地):大きな時代の流れから、私たちは2つの予測を立てています。

 1つ目は、自動車の製造に求められる能力が変化するだろうということです。直近では、自動車のパワートレイン(エンジンの回転エネルギーを駆動輪に伝える装置類の総称)がEVに置き換わりつつあります。また、5年から10年後には、レベル5の自動運転車が実用化されるという仮説が立てられています。EV化と自動運転化。これらは自動車の製造を大きく変えるため、ビジネスチャンスがあると考えています。

 2つ目は、日本国内だけでも新たに数兆円規模の産業になるだろうということです。弊社代表の山本(一成氏)が公の場でよく言っていることですが、私たちは日本国内に生産拠点を設け、日本で自動運転EVの産業を興そうとしています。コンピュータ将棋プログラムの「Ponanza」を開発した山本であれば、AIのスタートアップを起業するのがシンプルだったはずですが、それでは産業を育てるのは困難です。私たちは、MaaSよりも乗用車を事業にしたほうが、10年後により大きな産業を牽引できると考えています。

Turingが開発する車両の模型
Turingが開発する車両の模型

元垣内:自動車産業では、エンジンベースで内燃機関を内包する車両よりも少ない部品で製造できるEVに参入する企業が増えると言われています。実際にチャレンジされている徳地さんは、どのように感じてらっしゃいますでしょうか。

徳地:まさに私たちが取り組んでいる領域ですが、日本よりも海外でそれを強く感じます。4月に開催された上海モーターショー2023に参加したのですが、そこではテスラのEVよりも魅力的な中国製のEVがいくつも発表されており、衝撃を受けました。私はテスラのModel Yに乗っているのですが、すぐにでも乗り換えたいと思えるEVが5種類はあったのです。そこまで思わせるEVを、日本メーカーはまだ発表できていません。

 中国で驚いたのは展示会だけではありません。街に出てタクシーに乗ろうとすると、乗り心地のよいEVばかりでした。これらは欧州車のようにしっかりとした作りで、未来の自動車業界を象徴しているように思えました。

元垣内:中国は我々が思っている以上に進んでいるんですね。

徳地:ただ、現実的な問題として、EVであっても新参の企業が自動車をゼロから作るのは非常に難しいです。EVはとてつもない工数を要するエンジンが不要なので、部品の少ないモーターで動くEVの開発は容易に感じるかもしれません。しかし、車体の製造にかかるコストはガソリンエンジン車もEVも変わりません。プレス機の導入だけで数十億円、さらに型の製造に数十億円かかるので、EVであっても莫大な資金が必要となるのです。

元垣内:Turingさんは初のEV工場「TURING Kashiwa Nova Factory」を千葉県に新設しましたね[1]

徳地:この新工場では生産ラインの上限が100台ほどで、ひとまず小規模に体制を整えた形です。ここでノウハウと経験を蓄積しながら、2030年に向けて本格的な工場の準備をしていくことになります。

Turing株式会社 車両開発部 部長 徳地佑悟氏
Turing株式会社 車両開発部 部長 徳地佑悟氏

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この記事の著者

友清 哲(トモキヨ サトシ)

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