ClimateTech市場の拡大には何が必要か?
馬田隆明氏(以下、敬称略):本セッションでは、独立系ベンチャーキャピタルANRI アソシエイトの土本晃久さん、そして東京大学の未来ビジョン研究センターで教授を務める梶川裕矢さんと一緒に、ClimateTechを取り巻く動向についてお話ししていきます。
土本晃久氏(以下、敬称略):ANRIの土本です。東京大学大学院の工学系研究科化学システム工学専攻にて博士号を取得し、その専門性を活かして現在はベンチャーキャピタル(VC)で投資活動に携わっています。
ANRIは2022年に、気候変動・環境問題に特化したグリーンファンドを立ち上げました。このファンドは、単にリターンを求める投資家だけでなく、「気候変動を抑える」という理念に共感していただけるLP(有限責任組合員)から出資していただいている点、そして一般的に多くのVCファンドが最大10年程度をファンド期限として設定する中、12年から最大15年という長期間でファンド期限を設定している点が特徴となっています。この期限は、気候問題の解決にはより長期的な目線が必要であるという理由から設定されています。
梶川裕矢氏(以下、敬称略):東京大学(以下、東大)で研究者をやっています、梶川です。私は2023年4月に、当学の工学系研究科で「気候変動とアントレプレナーシップ」という講義を立ち上げました。講義以外での気候変動に関連する取り組みとしては、経済産業省のグリーンイノベーション基金という、2兆円規模の事業の中の5つのプロジェクトでアドバイザーを務めています。
また、企業に対し、気候変動関連で今後有望となる技術の調査や特定、そしてその技術をどうやって新規事業に活かすかという、コンサルティングのような共同研究も行ってきました。
馬田:梶川先生は大学の内外で気候変動に関する取り組みに関わっているんですね。
梶川:東大がこうした分野を物理学や経済学のような学問レベルで研究しようと、「サスティナビリティサイエンス」という新しい学術領域を立ち上げたのは2006年のことです。今までにないサイエンスに取り組めるということで、ワクワクして参画したのを覚えています。
そして10年程前からサステナビリティ分野の研究も様変わりしてきまして、「利益をあげながら事業活動として気候変動の課題を解決していく」という姿勢が浸透していきました。ただ、こうした動きは当初はあくまで学術界に限った話でした。事業側では、ここ1~2年で浸透が加速してきた印象ですが、ここからさらにどうやって盛り上げていくのか、頭を悩ませているところです。