エクサウィザーズは、中国電力と2021年度から共同で開発を進めていた水力発電所における運転計画システムが、2023年度に本格的な運用を開始することを発表した。
水力発電所の運転計画システムにおいてAIを活用することで、熟練者と同様の高度な制御が可能に。AIによって電力の需給や市場価格を考慮した最適化も行うとしている。今後、試運用を実施した2つのダムの水力発電所において実運用へと移行する予定だという。
取り組みの目的
中国電力ではこれまで、天候やダムへの水資源の流入量を予測しながら、現場のスタッフが運転を調整していた。また、近年は電力の需給動向に応じた運転も求められるという。しかし電力需給の動向は複雑で、それらを予測した緻密な計画が難しいという課題があるとしている。そこで、安定的かつ高効率な事業運営や技術継承の観点から、運転計画システムにおいてAIとデータを活用し、制御の最適化を図ることを検討したと述べている。
導入した手法
ダムなど貯水池式の水力発電所では、週間レンジにおける貯留水の発電への配分計画や、翌日の1日分の発電計画を策定している。これらでは、AIを活用しない従来的なモデルを利用して、ダムへの流入量を予測。その上で熟練者による経験を基に、複数の発電パターンから選択する手法を利用して計画を策定していたという。
今回の共同開発においては、ディープラーニング(深層学習)と最適化手法を組み合わせ、以下のような発電計画の策定を可能にするAIモデルの開発を行ったとしている。
- ダム流域の降水量予測を用いた、週間レンジ(10日間程度)のダム流入量の予測
- 長期間のダム流入量と市場の需給や価格の予測を用いた、週間レンジでの発電使用水量の最適配分
- 市場の需給や価格の予測を用いた、翌日分の最適な発電計画(30分毎)の策定
開発にあたり、エクサウィザーズのAIコンサルタントと機械学習エンジニア、中国電力のダム技術者が協力し、暗黙知となっていた様々な運営のノウハウを明確化し、運転計画システムのAIモデルに組み込んだと述べている。
期待される効果
2021年~22年度に、中国電力の山口県にある佐々並川ダム(佐々並川発電所)、島根県にある周布川ダム(周布川第一発電所)を対象に、開発した発電計画を策定するAIの試運用を実施。その結果、実際の発電所の運用に活用できる精度であり、従来よりも需要の高い時間帯に、集中して発電する計画が策定できることがわかったという。
同AIの活用により、ダムなど貯水池式の水力発電所によるさらなる水資源の有効活用と脱炭素効果が期待できるのではないかとしている。
今後は、他のダムへの展開を目指すとともに、試運用で明らかになった課題に対応するため引き続き共同開発を進めていくと述べている。また、エクサウィザーズでは脱炭素への取り組みを後押しするため、自治体などが保有するダムの水力発電への展開を図っていく考えだとしている。
加えて、今回開発したAIモデルとエクサウィザーズの保有する他のAI技術を組み合わせ、様々な再生可能エネルギー領域への拡大も視野に入れて、開発や社会実装を進めていくという。