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「学習マトリックス」と「2つの効果的質問」

第4回

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低コストで学習する

 新しい知識を獲得して不確実性を低減させる際、課題となるのが「コスト」だ。新事業が成功すれば見返りは大きいが、失敗すれば投下した資源は回収不能となる。損失を出すのは避けたいが、不確実性を相手にする以上、必ずどこかで失敗する。

 この時にポイントとなるのは、失敗を2種類にわけることだ。1つが致命的失敗であり、もう1つが学習的失敗。致命的失敗は、他の事業にも影響を与えるような再起不能につながる失敗だ。一方の学習的失敗とは、成果を出すために必要な次の行動につながる失敗を指す。無謀な投資をすれば致命的失敗を招く。しかし、低コストを心がければ、学習的失敗となる。

当時のFD(写真:kmoser.com) 当時のFD(写真:kmoser.com) 主に化粧品等を取り扱う花王が、かつてフロッピー・ディスク(以下FD)の製造を検討したことがある。背景には、同社の本業における石鹸や化粧品で培われた界面活性剤の技術があった。この技術を活用して新事業立ち上げを考えたのだ。技術的には可能だったが、「化粧品会社のFDを買う人はいるのだろうか?」という疑問が浮かんできた。
 少し想像してみて欲しい。有名な石油会社が、自社のロゴを貼り付けたスポーツドリンクを販売しているところを。このドリンクは売れるだろうか?もしかしたら、石油を飲んでいるようなイメージを与え、あまり売れないかもしれない。花王も同様の課題に直面した。ブランドイメージと販売商品が一致しているかどうか、市場参入の前に確かめる必要がある。

 そこで、花王は別のメーカーから自社の品質基準を満たすFDを購入し、花王のラベルを貼って販売を行った。反応は良好だった。つまり「化粧品会社の花王が販売していても、市場は受け入れてくれる」ということだ。結果的に花王はFD事業を推進させることにした。結果として、1992年の時点で、FD事業において世界1位(業界シェア15%)の業績を残した。

 想定される懸念事項に対して低コストでテストを行うことで、万が一失敗しても学習的失敗となり、再起不能な状態になることはない。ユーザーに関連する新しい知識を得ることができれば、次の成果に向けて行動することができる。

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領域を限定して学習する

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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