低コストで学習する
新しい知識を獲得して不確実性を低減させる際、課題となるのが「コスト」だ。新事業が成功すれば見返りは大きいが、失敗すれば投下した資源は回収不能となる。損失を出すのは避けたいが、不確実性を相手にする以上、必ずどこかで失敗する。
この時にポイントとなるのは、失敗を2種類にわけることだ。1つが致命的失敗であり、もう1つが学習的失敗。致命的失敗は、他の事業にも影響を与えるような再起不能につながる失敗だ。一方の学習的失敗とは、成果を出すために必要な次の行動につながる失敗を指す。無謀な投資をすれば致命的失敗を招く。しかし、低コストを心がければ、学習的失敗となる。
少し想像してみて欲しい。有名な石油会社が、自社のロゴを貼り付けたスポーツドリンクを販売しているところを。このドリンクは売れるだろうか?もしかしたら、石油を飲んでいるようなイメージを与え、あまり売れないかもしれない。花王も同様の課題に直面した。ブランドイメージと販売商品が一致しているかどうか、市場参入の前に確かめる必要がある。
そこで、花王は別のメーカーから自社の品質基準を満たすFDを購入し、花王のラベルを貼って販売を行った。反応は良好だった。つまり「化粧品会社の花王が販売していても、市場は受け入れてくれる」ということだ。結果的に花王はFD事業を推進させることにした。結果として、1992年の時点で、FD事業において世界1位(業界シェア15%)の業績を残した。
想定される懸念事項に対して低コストでテストを行うことで、万が一失敗しても学習的失敗となり、再起不能な状態になることはない。ユーザーに関連する新しい知識を得ることができれば、次の成果に向けて行動することができる。