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「学習マトリックス」と「2つの効果的質問」

第4回

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新たな価値を提供するための「2つの効果的な質問」

 最後に、マトリックスを活用する際で、効果的な質問を2つ紹介したい。1つがユーザーは既知だが製品・サービスが未知の時だ。この場合は「今のユーザーの生活に、さらなる価値を提供するにはどうすればいいだろうか?」という質問になる(ウォークマン型質問)。もう1つが、製品・サービスは既知でユーザーが未知の場合だ。これは「新たなユーザーに価値を提供するにはどうすればいいだろうか?」という質問になる(Wii型質問)。

2つの質問:学習マトリックス 2つの質問:学習マトリックス これらは、第2回の記事で紹介した「有用性」に焦点を合わせる質問となる。イノベーションは、最終的に新たなユーザーの行動パターンやライフ・スタイルを生み出したかどうかで、その正否を判断することができる。ウォークマンであれば、通学中に音楽を聞くという新しい行動パターンを生み出した。Wiiであれば、母親を含めた家族同士でゲームを遊ぶという状況が生まれた。

 ウォークマンにせよWiiにせよ、まず初めに想定されていたのは「ユーザーの生活」である。技術でもなければビジネスモデルでもない。もちろん、イノベーションを起こそうという考えもあったかもしれない。しかし、全ての始まりは、ユーザーや社会へ新たな価値を提供しようとしたその発想にある。

 不確実性を減らすために、常に人間中心的な態度で学習を続けよう。繰り返し学ぶことで、未知の領域が既知となり、イノベーション実現の可能性を高めてくれる。

 本稿内の出典・参考文献は以下にまとめます。

  1. Brown, T. (2009) Change by Design: How Design Thinking Transforms Organizations and Inspires Innovation, HarperBusiness.(邦訳:T. ブラウン, 2010『デザイン思考が世界を変える』千葉敏生訳、早川書房)
  2. Drucker, P.F. (1985) Innovation and Entrepreneurship, Harper & Row.(邦訳:ドラッカー, 2007『イノベーションと企業家精神』上田敦夫訳, ダイヤモンド社)
  3. Edmondson, Amy C. "Strategies of learning from failure." Harvard business review 89.4 (2011): 48.
  4. Govindarajan, V., Trimble, C. (2012) The Other Side of Innovation: Solving the Execution Challenge, Harvard Business Review Press.(邦訳:ビジャイ・ゴビンダラジャン, クリス・トリンブル, 2012『イノベーションを実行する―挑戦的アイデアを実現するマネジメント』吉田利子訳, エヌティティ出版)
  5. Knight, F. (2006) Risk, uncertainty and profit. Dover publications.
  6. McGrath, Rita Gunther. "Failing by design." Harvard Business Review 4.11 (2011).
  7. Orrell, D. (2007) Apollo's Arrow: The Science of Prediction and the Future of Everything, Harpper collins UK.(邦訳:デイヴィッド・オレル, 2010『明日をどこまで計算できるか? ――「予測する科学」の歴史と可能性』大田直子他訳, 早川書房)
  8. 植村修一(2012)『リスク、不確実性、そして想定外』日本経済新聞出版社.
  9. 溝上幸伸(2008)『任天堂Wiiのすごい発想―技術競争を捨てて新しい市場開拓に成功』ぱる出版
  10. 経済産業省『中小企業白書 2005年版』
  11. 酒井泰弘 (2012) 「フランク・ナイトの経済思想?: リスクと不確実性の概念を中心として」 彦根論叢, (394), 38?57.
  12. 総務省消防庁『平成23年度版 消防白書』
  13. Sony Japan,『Sony History
  14. 福澤英弘, 小川康(2009)『不確実性分析 実践講座』ファーストプレス.

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

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