政令市の首長こそが、リーダーシップを発揮できる
政治家を志すきっかけとなったのが、中東の国々での体験でした。高校時代から中東問題に興味があり、学生時代は実際に中東を訪問したのですが、現地の方々は皆さん温かく親切でしたし、親日家も多くて、日本人であるというだけで守られ、尊敬されているということを強く実感しました。特にパレスチナで国籍を持たない人たちと接する中で、自分の置かれている環境のありがたさを実感するとともに、国家というものを非常に意識するようになりました。祖父が市長をしていたので小さい頃から政治が身近だったこともあり、いつか生まれ育った日本という国、故郷を守りたい。そのために将来は自分も政治家になるんだと、大学生の時に決心しました。政治家の中でもなぜ、市長を目指したのかというと、日本の行政システムにおいては、「政令指定都市の首長」こそが、一番リーダーシップを発揮できると考えたからです。
政令指定都市は、市といういわゆる基礎自治体としての“現場”と、広域自治体としての都道府県に相当する権限の両方を持っています。しかもその予算権、人事権を持つ首長が直接選挙で選ばれる。いってみれば、大統領制と似ているのです。いろんなことにスピード感をもってチャレンジしていくためには、政令指定都市の首長を目指すべきだと考え、福岡市長選挙に出馬し、当選を果たすことができました。
アナウンサーとして身につけた「伝える力」
当初アナウンサーとしてTV局に就職したのは、メディアを通して、様々な問題提起をしたり、地域にある良いものをどんどん発信していきたいという思いがあったからです。もう一つは、将来、政治家を目指すためにも、知名度も上げておかないといけないという思いもありました。選挙に弱ければ政治家になった後に政策よりも選挙のための活動に時間が取られてしまうと聞いていたからです。朝の情報番組のキャスターを務めていたおかげで、いろんなかたちで地域のニュースを取り上げることが出来ました。スポーツや芸能といった話題から報道まで幅広い情報を、いかに分かりやすく多くの視聴者にお伝えすることができるか。常にそれを考えて発信をしていました。不特定多数の市民にわかりやすく伝えるためには、プロとしてのノウハウが必要です。共通理解の深い組織内部に対して伝えることとは全く別なんです。そういう意味でキャスターとしての経験は極めて大きかったですね。市長として、福岡市が目指す方向性や具体的な施策について対外的に発信するときに、非常に役立っていると思います。