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DDC元CEOに学ぶ、システミックイノベーション──メガホン型思考とミッションマネージャーの役割とは

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 2023年、国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界競争力ランキング」で、世界で最も競争力のある国として一位になったのがデンマークである。その理由の1つとして、早くからデザインの重要性に着目してきた点が挙げられ、その原動力となっているのが、1978年に設立されたデンマーク・デザイン・センター(以下、DDC)という国立のデザインファームだ。本稿は、DDCの元CEO クリスチャン・ベイソン氏と、デザインコンサルティングファームKESIKIの共同創業者かつCDOである石川俊祐氏の対談イベントのレポート。冒頭のベイソン氏のレクチャーではDDCの取り組み、システミックイノベーションとは何か、その実践とデザインの役割が語られ、石川氏との対談では、その詳細についての議論が繰り広げられた。本稿ではイベント全体の様子をレポートする。

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社会的インパクトを実現するための「ミッション」

 デンマークは、行政セクターと民間セクターともに、デジタライゼーションの水準が常に世界ランキングの上位であり、首都コペンハーゲンは世界で最も住みやすい都市の1つとされている。また、スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所(IMD)が発表している「世界競争力ランキング[1]」では、世界で最も競争力のある国としてランキング一位に輝いている。

「もちろん、デンマークを模倣することに本質的な意味はありません。重要なのは、政治学者のフランシス・フクヤマの言葉を借りれば『うまく機能する社会を作ること』です。デンマークの事例はあくまでヒントに留めつつ、持続可能な、そして愛にあふれる社会をデザインの力で創造する方法について考えてほしいと思っています」

 力強く講演をスタートしたベイソン氏は、まず「ミッション」という言葉を2つの意味に大別する。

 1つ目は、これまでのビジネス文脈で用いられてきた「私たちはなぜ働くのか」「自分の会社はどのような社会的な変化を起こしたいのか」という、自社の存在意義という文脈でのミッションだ。

 一方、デンマーク・デザイン・センター(以下、DDC)が掲げ、定義するミッションは「社会的インパクト」のためのミッションという位置づけだという。社会変革というレベルでのイノベーションは「システミックイノベーション」と呼ばれ、環境課題や都市課題、ウェルビーイングなど様々な領域において、単独では解決することが困難な課題へと取り組むために企業や政府、NGOなどが共創的な課題解決を目指す。この文脈での「ミッション」とは、より広い範囲を指す言葉で「社会変革」や「社会的インパクト」に関連した定義になる。DDCは自社のミッションを、「大胆で、インスピレーションに富み、広く社会に影響のあるインパクトのうち、具体的な地域課題や状況を踏まえ、枠組みとターゲットを明確に定めているもの」と定義している。

 DDCは、自分たちの活動を「グリーン」「デジタル」「ソーシャル」の3つの領域に位置付け、それぞれの領域で、システミックな変化を起こすための「トランジション(変革を進める状態・活動)」に注力している。そして、パブリックセクター(公共)、プライベートセクター(民間)、非営利セクター、その他パートナー、ひいては市民などの多様なアクターによるコラボレーションを戦略的に創出して、長期的かつ分野横断的に示される野心的なミッションを達成するための活動を行っている。

 ミッションを具体的なものへと近づけ、多くのステークホルダーが共有できるようなものにするためには、特にデザインやストーリーテリングが大きな力を発揮するとベイソン氏は語る。DDCが広大なミッションに対してデザインアプローチやナラティブの力を駆使して取り組む理由は、システミックな変化を阻む要因には、そもそも多くの人が既存のシステムや枠組みにどこか心地よさを感じていることもある。だからこそ、既存の社会や枠組みをこえてシステミックな変化を起こしていくには、根本のメンタルモデルや文化・生活のあり方に対しても変化を促す必要がある。そのためには現実のシステムとは異なるナラティブで想像(imagination)を構築することが重要だとした。

社会的インパクトを実現するための「ミッション」
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[1]IMD「World Competitiveness Ranking

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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