ビービットは、UXやDXの方法論・事例を解説するビービット 執行役員 CCO（Chief Communication Officer）の藤井保文氏の分身AIを開発し、一般公開した。

　開発には会話AI構築プラットフォームmiibo（ミーボ）を活用しており、これまでビービットが蓄積してきたUX方法論を学習した藤井氏の分身AIが、チャット形式で質問に回答する。

　ビービットは、生成AI技術の活用においても、企業支援の現場で実践を重ねてきたという。そうした実践を通じてわかってきたのは、生成AIを活用したサービス開発では「自分たちしか保有していないデータや情報」がどれだけ存在するかが企業の強い競争力になるということだとしている。

　同社は、日本の先を行く海外の知見や事例を収集しながら実践を繰り返し、その結果をUXにおける独自の理論・方法論としてまとめ続けている。その考え方や方法論は、『アフターデジタル』（日経BP）シリーズをはじめとする書籍や、セミナー、記事など、これまで作り続けてきたコンテンツに詰まっているという。こうしたコンテンツこそが、ビービットにとっての「自分たちしか保有していないデータや情報」だと考え、時代に対応する自社の生成AI活用として今回の実装を行ったと述べている。

　同社は元々、UXやDXに関する質問・相談を外部から受けているが、限られたリソースのなかでより多くの人々の悩みに応えるため、理論・方法論に基づいた一定レベルの質問回答、事例探索などの対応業務において、AIの活用を決定したという。

いつでも、どこでも、『アフターデジタル』著者のAI分身が回答

　同社が目指したのは、『アフターデジタル』シリーズの著者であり、ビービットCCOである藤井保文氏の分身。藤井氏のAI分身が、利用者のUXやDXに関する質問に対して回答する。開発には会話AI構築プラットフォームmiibo（ミーボ）を活用し、第一段階のリリースを行った。

　現時点でAIの学習に使用したのは、『アフターデジタル』シリーズや『ジャーニーシフト』など書籍の草稿段階の原稿、過去行った講演内容の書き起こし、定期的に配信しているニュースレターやメールマガジン、追加で作成した言葉の定義書など、50万字を超える文章データ。その上で、最適な回答を出せるようにプロンプト、シナリオ設計、インターフェースの調整を実施したという。

現在提供している機能概要

　WebブラウザおよびLINEアプリ上（ver.β）で利用可能。自然言語による自由な会話が可能だが、利用開始時にガイダンスとして以下の選択肢が提示される。これによって、利用者は自身でプロンプトを一から作成しなくても精度の高い回答を得やすくなるとしている。

• UX/DX事例、ビジネスモデル
• 基礎知識（UX/DX/生成AI/OMO、その他方法論）
• 困りごと相談
• 思考実験・新しい計画や事業の検討
• 上記に加え、過去の藤井氏の発言から役に立つ一言をピックアップする「なんかいいこと言って」という選択肢も用意

　特に事例収集に関しては、ビービットの理論・方法論を基に世界中から最新のUX・DX事例を効率的にピックアップすることが可能になっており、実際にビービットのプロジェクトの中でも活用しているという。

他サービスとの連携、人材育成、海外展開への活用も視野に

　今回の一般公開の位置づけは、どの程度活用されるかを測るテストマーケティングだという。今後、ビービットが提供する既存サービスとの連携や、クライアント企業専用環境の提供など、様々な方向性での展開を検討。ビービット社内においては、生産性向上および育成を目的に、実際の営業活動やプロジェクトでの活用、自主学習での活用なども視野に入れているという。

　また、グローバルにおいては、海外拠点（上海・台北）へのレクチャーなどによって地道に理論・方法論の普及活動を行ってきたが、今回の分身AIによってより簡易的な方法で言語の壁なく普及を行えるため、ビービットのグローバル展開という観点でも有効に活用していくことを狙っているとしている。