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デザイン思考は多様性を持つ組織の「共通言語」

第8回

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多様性を持つチームの“共通言語”としてのデザイン思考

 イノベーションには多様性が欠かせない。しかし、多様性が高まれば高まるほど、ある問題が生まれる。それは、異分野の人の専門用語や常識、考え方や発想に対する理解に時間がかかってしまうことだ。その場にいる関係者の専門性が特化されていれば特化されているほど、コミュニケーションがうまくいかない可能性が高まる。

 たとえば、仲の良い大学生4人が言語を学ぶとしよう。たまたま、英語やスペイン語、中国語や韓国語とそれぞれの興味がわかれた。最初は簡単な単語を覚えるため、言語が違ってもまだ何度なく互いの様子がわかる。しかし、時間が経って難しい単語や複雑な文法を習うにつれ、それぞれ何をしていて、どの程度のスキルがあるのかといったことが見えなくなってくる。

 必要なのは何だろうか。それは「共通言語」だ。日本人には日本語があるように、価値創造のためには意思疎通を円滑にする共通言語が必要となる。デザイン思考こそが、共通言語になりえる。なぜなら、デザイン思考があることで、分析的思考が得意な人と、直観的思考が得意な人が、互いの弱みを補強しながら協力することができる。

 従来ならコミュニケーションが極めて難しかった異なる知性を、スムーズに噛み合わせながら、協力して新しい価値を創造することを可能にする。逆に言えば、デザイン思考は単独では何の意味も価値も生み出せない。異なる分野や領域において特化したスキル・知識・人材を統合するための道具である。

 「専門分野に特化した」という話をすると、必ずこのような意見が出る。「うちはゼネラリストしかいない。専門分野に特化できる人材はいない」と。それは間違っている。人材はいる。単に、本人や周囲が「何に特化すべきか?」「得意な思考法は何か?」「どのような領域で組織に貢献できるか?」といったことに、今まで気づいていなかっただけだ。

 気づくにはどうすればいいだろうか。各領域で実際に動いてみればいい。それが、以前の記事でも紹介した「知覚」「定義」「跳躍」「実装」という4つの学習スタイルだ。

 本稿内の出典・参考文献は以下にまとめます。

  1. Brown, T. (2008) Design Thinking, Harvard Business Review, June, pp. 84-92.
  2. Brown, T. (2009) Change by design, HarperCollins,.(邦訳版:『デザイン思考が世界を変 える』千葉敏生訳, 早川書房, 2010)
  3. Martin, R.(2009) The design of business, Harvard business press.
  4. Michalko, Michael. Creative Thinkering: Putting Your Imagination to Work. New World Library, 2011.
  5. 鈴木公明(2013)『イノベーションを実現するデザイン戦略の教科書』 秀和システム.
  6. T. ケリー & J. リットマン(2002)『発想する会社!』鈴木主税&秀岡 尚子訳、早川書房
  7. スタンフォード大学d.school『スタンフォード・デザイン・ガイド デザイン思考 5つのステップ』一般社団法人デザイン思考研究所編.
  8. IDEO.org『イノベーションを起こすための3ステップ・ツールキット』一般社団法人デザイン思考研究所編.
  9. K-12 lab wiki

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

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