ガートナージャパン(以下、Gartner)は、2029年までに、現在ITコンサルティング・ベンダーへ委託している業務の30%はAIで行えるようになるとの見解を発表した。
同社バイスプレジデントアナリストの海老名剛氏は次のように述べている。
「市場競争で優位に立つためにデジタルビジネスの実現を経営層が強く意識する中、企業において、テクノロジやITサービスの活用を中心的な立場で支えるソーシング/調達/ベンダー管理のリーダーに寄せる期待は非常に大きくなっています。一方で昨今は、生成AIをはじめとする『破壊的』テクノロジの台頭もあり、内外製の判断や調達方法の見極め、またベンダー選定はもちろん、コストや品質管理の難易度も高まっています」
近年、日本におけるコンサルティングサービスへの支出は急拡大した
2021年以降2023年にかけて、国内コンサルティング・ベンダーの人員数や売り上げが急拡大した。Gartnerの最新の市場予測では、国内コンサルティングサービス市場は、2022年に前年比19.8%、2023年にも前年比10.7%で拡大したと推計しているという。
ただし企業では、コンサルタントの「質」を疑問視する声も強まりつつあり、実際に人月単価に見合う成果が得られない、成果を測定できないなどの声が上がっているとのこと。デジタルビジネスの立ち上げは、コンサルティングサービスを利用する大きな目的に挙げられるが、新ビジネスの立ち上げはコンサルタントへ過度に依存せず、自社主導で行うべきとの企業の意向の強まりもみられるとしている。
新たなデジタルビジネスの創出だけでなく既存ビジネスの変革も、企業がコンサルティングサービスを利用する大きな目的である。同社が2023年11月に国内で行った調査でも、新ビジネスの立ち上げに取り組む企業の中でコンサルティングサービスを利用する企業の割合は41.4%であるのに対し、現在のビジネスモデルの改善に取り組む企業のうちコンサルティングサービスを利用する企業の割合も37.7%と拮抗していたという。
AIの活用やコンサルティングサービスへの委託を適正に行うことが企業の市場競争力につながる
海老名氏は次のように述べている。
「既存ビジネスを対象とするコンサルティングでは、既存プロセスの棚卸し整理といった比較的単純な作業の工数が委託作業全体の3分の1以上になる契約が珍しくありません」
企業のAI利用は進展しており、特に2023年以降は生成AIも視野に入れた利用が活性化している。顧客対応や品質管理など既存プロセスの問題点の洗い出しや改善提案を、AIから得ようとする試みもみられるようになっているとのこと。情報整理や理想像とのギャップ分析といった作業でのAI活用は加速し、今後5年のうちにはその大部分がAIに置き換わるとGartnerはみている。
こうなるとコンサルティングサービスには、これまでなかった新たなアイデアやインサイトの提供など、高度な価値が改めて問われるようになるという。海老名氏は次のように述べている。
「現在コンサルティング・ベンダーへ委託される作業のうち、比較的単純なものがAIで行われるようになったとしても、社内のみでは発想が難しいアイデアを得たり、新たなビジネスを立ち上げたりすることを支援するコンサルティングへの需要は継続するでしょう。今後、AIをビジネスへ取り入れる能力や、コンサルティング・ベンダーへの委託を適正に行う能力が、企業の市場競争力をますます左右するようになります。十分な能力が確保できない企業は、効果が得られないままAIやコンサルティングサービスに多額のIT予算を費やし競争優位を失う可能性があります」