インタビューでの注意点-「欲しい答え」への誘導
準備万全であっても、実際の聞き方次第で折角の機会が台無しになることがある。より共感的に話を引き出すうえでは、以下のポイントに特に注意したい。
- 沈黙を受け入れる
インタビューを進めていくなかで、沈黙が訪れる場合もある。そんなときに「聞き方がまずかっただろうか」「よし、違う質問に変えよう」と沈黙が悪いものだと思いがちだ。しかし、質問に対して相手が考えを思い巡らせているから沈黙している場合もある。最初は居心地が悪いかもしれないが、その居心地の悪さを少し耐えたあとに、相手の口から普段は聞けないような深い言葉が出てくるかもしれない。 - 答えを出さない
相手が口ごもったときに「それはつまり、〇〇ということですよね」と先回りして答えを提示しないようにしよう。自分が予想した答えと、相手が本当に感じていたことは往々にして違うからだ。誘導的な形になると、それはインタビューではなくなってしまう。 - 中立的に質問する
インタビューをする側は、テーマに関して強い思い入れがあり、「こうあるべきだ」という考えがあるかもしれない。すると「音楽を聞くことは気分転換するうえで重要だと思いませんか?」と自分の意見が入った質問をしてしまう場合がある。そうではなく、たとえば「どんな時に音楽を聞くか?」といった形で、こちら側の価値判断が含まれていない質問をしよう。? - オープン・クエスチョンを使う
「〇〇は好きですか?」といった質問は「クローズド・クエスチョン」と呼ばれており、Yes か Noかで答えられるものだ。クローズド・クエスチョンは相手が簡単に答えられるという利点がある一方で、そのまま会話が途切れてしまうという欠点もある。インタビューをする際は「好きなものは何ですか?」といったように、相手が自由に答えられる「オープン・クエスチョン」を心がけたい。
インタビューにも“素振り”が必要
上手にインタビューを行うために日頃から「練習」をしよう。友人や家族と会話をするときに、意識的に「なぜ?」という視点をもって話を聞いてみるといい。「つい誘導的に話を聞いてしまった」といった自分のクセを、日常の会話を通じて知ることができる。
観察もインタビューも、イノベーション実現に必要な1つのスキルだ。意識的な練習を重ねることで、現場に出た時にもうまく対応できるようになってくる。
本稿内の出典・参考文献は以下にまとめます。
- Smith, Adam. (1875) Theory of Moral Sentiments.
- F・ドゥ・ヴァール(2010)『共感の時代へ』 柴田裕之訳、紀伊國屋書店
- スタンフォード大学d.school 『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』一般社団法人デザイン思考研究所編
- 一般社団法人デザイン思考研究所 『デザイン思考入門コース』 スライド資料