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ベネッセのDX組織が体現する顧客体験の分断の乗り越え方。横串組織はべき論ではなくQuick Winを

【前編】ゲスト:株式会社ベネッセホールディングス Digital Innovation Partners 副本部長 水上宙士氏

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DX組織設置の背景にあった「紙媒体とデジタルの逆転」

藤井保文氏(以下、敬称略):本日は、ベネッセのDX組織「Digital Innovation Partners(以下、DIP)」の副本部長である水上宙士さんをゲストにお迎えしました。DIPはベネッセグループのDX戦略を担う組織として2021年に設立されました。ベネッセグループは教育、生活、介護と複数の領域に渡る事業を展開しており、また近年では「GIGAスクール構想」などの影響で顧客側の環境も大きく変わりつつあります。そうしたなかで、デジタル戦略や顧客体験をどのように捉えているのか本日はお伺いしたいと思います。

 その前には、まずは前提として、水上さんのご経歴からお聞かせください。

水上宙士(以下、敬称略):本日はお招きいただきありがとうございます。私はベネッセのプロパーで、今年で入社11年目です。新卒入社後、マーケティング部門に配属され、主にマーケティング領域でキャリアを積んできました。これまで「進研ゼミ」のデジタルマーケティングや、TVCM制作、ブランディングなどを担当しています。その後、2020年にDIPの前身となるDX組織に異動となり、以降はベネッセグループ全体のDXや顧客体験戦略の実行などを手がけるようになりました。

藤井:DIPについてもご紹介いただけますか。

水上:DIPはベネッセグループのDXを担う事業横断型の組織です。ベネッセグループは、進研ゼミやこどもちゃれんじなどの「校外学習事業」、大学入試模擬試験の進研模試などを提供する「学校向け教育事業」、社会人向けオンライン教育プラットフォームを提供する「大学・社会人事業」、入居・在宅介護サービスなどを提供する「介護・保育事業」の4つの領域で事業を展開しています。DIPは、これらの事業を担当する部門を横串で繋ぎ、グループ全体のDXを推進する役割を担います。

 DIPが設立されたきっかけとしては、コロナ禍の影響が大きかったです。ベネッセは1955年に岡山県で創業した「福武書店」をルーツに、70年近くに渡って事業を営んできました。しかし、その歴史の大半はオフラインのサービスが中心。進研ゼミや進研模試は紙媒体で提供していましたし、介護や保育のサービスも対面のサービスです。オフラインこそが、ベネッセの提供価値の中心だったといっても過言ではありません。

 そこに転機が訪れたのがコロナ禍でした。社会全体でデジタル化が進展し、学校教育におけるタブレット導入も一気に進みました。進研ゼミでは10年ほど前から紙媒体とデジタルの両方で教材を提供していたのですが、デジタルを選択するユーザーはずっと2割程度だったのが、直近では紙媒体を選択するユーザーのほうが2割程度と逆転しています。

藤井:まさにコロナ禍により多くの業界でDXに一定の進展がありましたね。

水上:はい。こうした変化に直面するなかで、課題として浮上したのが人材の問題です。これまで、紙媒体の事業や対面のサービスを手がけてきたにも関わらず、一転してデジタルサービスの設計やUXデザインの知見が求められるようになりました。職能としても、PdMやUXデザイナーといった新たなポジションが必要です。

 ベネッセはかなり真面目な社風で、実直な社員が多いのでリスキリングには熱心なのですが、既存の人材だけではなかなか追いつかない部分もあります。そこで、社内に存在していたデジタル系の人材を集約し、さらにDXコンサル、データサイエンティスト、UXデザイナーなどの専門人材を外部から採用することでDXの専門組織を構築し、グループ全体のデジタルシフトを推進しようというのがDIP設置の目的でした。

藤井:DIPには既存の社員と外部から採用した中途社員の両方が所属しているわけですね。両者の比率はどれくらいなのでしょう。

水上:概ね2:8くらいでしょうか。

藤井:近ごろ、DX組織を組成する企業が少なくありませんが、その多くが、ほぼ中途採用の外部人材を中心にDX組織を組み立てている印象です。それらと比較すると、ベネッセさんでは既存の社員との融合がうまくいっているのではないでしょうか。

水上宙士
株式会社ベネッセホールディングス Digital Innovation Partners 副本部長 水上宙士氏

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縦割りの組織やKPIが顧客体験を毀損する理由

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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