「コカ・コーラ C2」の失敗
新しいプロダクトが失敗する理由の1つによくあるのが「あいまいさ」である。訴えたいこと、使い方、メリット・・・。どのような視点でも構わないが、少なくともそのアイデアやコンセプトに「明確さ」がなければならない。
ザ コカコーラ カンパニーによる「コカ・コーラ C2」は明確さを欠いた典型的な製品といえる。この製品は2004年に発売され、広告費用には5,000万ドルが投じられた。かなりの期待を込めた製品といえるが、どんな特徴を持ったコーラだったのだろうか。C2の特徴は「今までのコーラに比べてカロリーが半分」というものだった。
もし、凄くカロリーを気にしている健康志向の人がいたとして、この製品をどう思うだろうか?「カロリーが半分と言われてもピンとこない」というのが正直なところだろう。では、根っからのコーラ・ファンだったらどうだろうか?健康志向の人と同様に「半分だからどうなの?」と感じるだろう。もしくは「そもそもカロリーを気にしてコーラを飲んだことはない」という意見だってあるだろう。
つまり、C2が持っている特徴は、誰にとっても曖昧で不明確なものだったのだ。当然、市場の反応は冷ややかとなる。既に販売されていた普通のコーラとダイエット・コーク、そしてC2を合わせた世界全体の売上量は2%増えただけだった。広告費用だけでも5,000万ドルを投じた結果としては、惨敗だ。当時の経営陣もC2を失敗とみなした。
ただ、彼らはこの体験から学習をした。そして誕生したのが「コカ・コーラ・ゼロ」だ。カロリーがゼロ。この特徴は極めて明確だ。コカ・コーラ・ゼロは、現在でも店頭に並ぶ、定番商品の1つになっている。
以上のように、多様な視点を意識する際は「明確であること」を意識しよう。妥協の産物として「“そこそこ”ユーザーに価値があり、“そこそこ”うまくいきそうで、“そこそこ”新しい」などというプロダクトを生み出しても、イノベーションはおろか何の成果にもならない。尖った視点を意識しながら、多様な視点が含まれているアイデアを選び、イノベーションの可能性を壊さないように心がけたい。
本稿内の出典・参考文献は以下にまとめます。
- J. シュナイダー&J. ホール(2011)「新製品が失敗する5つの理由」『Diamondハーバード・ビジネス・レ ?ビュー』 ダイヤモンド社、36(7)、142-147
- スタンフォード大学d.school 『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』一般社団法人デザイン思考研究所編
- d.school k-12 lab
- Howcheng