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2016年・中期経営計画のポイント

経営企画の「プランB」―中期経営計画で「財政の危機」を扱う方法(1)

第1回:財政の危機(1)

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 政府/自治体の国債発行残高が1,000兆円を超過した現在、財政問題は企業経営において既に無視できない要素になっている。中計が来る5年間を対象とするなら、市場に巨大な変化が到来する事態も想定せざるをえない。  中期経営計画の観点から見たとき、重要なポイントは「破綻するのか/いつ破綻するか」ではなく、現実的な「プランB」を検討することである。また、市場に到来するであろう大変化に備えることによって、大きな商機を見出すことも可能である。本連載は、その基礎となる発想/計画論について解説する。

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財政再建の概況

 財政問題に関する精密な予測は難しいが、大まかなシナリオを抽出することは可能である。
 限られた紙面ではあるが、全体を支配し、財政動向に強い影響を与える要素を取り上げながら概況を整理してみよう。

財政再建、4つの要素

 説明に使うフレームは上の通りである。国民/政府/政治/中央銀行の4者が、将来の財政シナリオに大きく関与している。これら、4つの要素が有するメインシナリオを順にチェックしてみよう。

①国民

  国民の側は、先行きが明るくない。図のように、稼ぎのある正社員は既に税投入される側にいる高齢者/非正社員/自営業/失業者よりも数が少なくなっているからである。高齢者の大多数は年金受給者であり、納税するどころか最大の財政悪化要因になっている。

所得の配分:2014年

 稼ぐ層は数が少ないばかりでなく、実質的な可処分所得の減少も止まらない。現在の日本には富裕層が少ないうえに、年収1千万円以上の人口は男性で6.2%/女性0.9%にまで減少している。給与所得者の範囲に限定すると、男女合算でわずか3.9%しかいない。さらに、好景気と言われながらも非正社員は着実に増え、かつて稼ぎの良かった自営業は最盛期の2/3にまで激減し、所得水準は年収300万円を切っている。このように税収を稼ぐ層よりも税からの受益を受ける層のほうが既に多く、この構図はさらに悪化してゆく。

 経済的に脆弱な人口動態は、二つの困難をもたらす。
 まず、「稼げないから増税が難しくなる。稼ぎが無いから消費もない。消費がないから経済成長も無い。」という悪循環を止めることが出来ず、経済成長/財政緊縮が同時に困難になってしまう。経済成長が出来ない以上、法人税を含めて税収はそう簡単には増えない。実際に政府が今年に策定した財政再建計画は、「楽観的すぎる」と各方面から集中砲火を浴びたが、この人口動態の下で明るい数字を作るのは誰が計画しようと既に難しくなっている。

 より深刻な困難は、「経済成長よりも分配/再建の先送り/財政破綻を好む」という終末的な世相を止めることが出来なくなる危機である。

タイトル

 図のように、テレビを視聴している層は既に高齢者が主流である。新聞の紙面/世論/投票率/政党アジェンダの全ては高齢者の影響を受けるから、財政再建の機運が盛り上がらないまま時間が過ぎてゆくだろう。これは事態の好転を大いに妨げる要因になる。

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この記事の著者

中村事業企画(ナカムラジギョウキカク)

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