大企業とベンチャーという「異文化の壁」をどのように越境したのか？

佐宗：
　ここで一つ気になるのが、加藤さんの取り組みを別の角度で捉えると、大企業とベンチャーの「異文化の壁」を越境している取り組みともいえますよね。一般的にベンチャーは大企業のことを嫌いですよね。まずカッコ悪いと（笑）。基本的に「アンチ大企業」という方も多いように感じます。彼らは事業に対して「自分は人生をかけてやっている」という自負があって、そのようなエネルギーにぶつかっていく覚悟がないと、本当に腹を割って話し共創を生むのは、なかなか難しいということを経験しています。私の場合、まずはそんな理解をすることから、彼らと話せるようになってきたと思います。加藤さんはいかがでしょうか。

加藤：
　他のアクセラレータプログラムの運営者とお話していても同じ結論になったのですが、ベンチャーに対して「フラットなお付き合い」を意識しないと絶対にうまくいかない。KDDI∞Labo所長の江幡智広さんに習い、我々も「ベンチャー・ファースト」という言葉を使っていますが、ベンチャーの成長を促すことが目的で、「何か判断に迷うことがあれば、まずはベンチャーを優先しましょう。自分たち、自社は二の次です」というスタンスでいるべきだと。たとえば、江幡さんのみならず、住友不動産の兼松公彦部長も「ベンチャーに敬意を表する」というスタンスをとっていて、やはりみなさんいい関係を築けている。