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カスタマーサクセス成功の鍵は、フェーズ分け運用とツール連携──バーチャレクス・コンサルティング調査

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 バーチャレクス・コンサルティングは、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施した。

フェーズ分け運用の実態と業績指標に与える影響

 カスタマーサクセスの取り組みを自社で行っている人のうち、効果を感じている「効果実感層」と、効果を感じていない/どちらとも言えない「効果未実感層」のそれぞれに、サクセスロードマップに基づいた運用プロセス・ルールを定めているかどうかを質問したところ、効果実感層では、半数以上の55.3%が「フェーズを分け運用を行っている」と回答。さらに、「試験運用を行っている」が34.6%と、合わせて約9割が何らかの形でフェーズ分け運用を実践していることがわかった。

 これに対し、効果未実感層では「フェーズ分け運用を行っている」はわずか15.4%にとどまり、多くの企業でフェーズ分けの運用体制が未整備、または認知されていないことが示されている。フェーズ分けを行うことで顧客の状況を正確に把握し、最適なタイミングでフォローアップを実行できるため、カスタマーサクセス施策の成果が顕著に上がることが、このデータから示唆されるという。

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 フェーズ分け運用を行っている層、行っていない/不明層に分け、それぞれの直近1年間の業況変化について見ていく。まず、新規顧客数の変化について、フェーズ分け運用を行っている、あるいは試験運用を始めている企業では、76.1%が「新規顧客数が増えた」と回答しており、「減少した」は5.2%にとどまっている。

 一方、フェーズ分け運用には至っていない、もしくは状況が不明な企業では、「増加した」が55.6%と半数を超えているものの、「変わらない」が37.2%、「減少した」が7.2%という結果となった。つまり、フェーズ分け運用を実践している企業は、新規顧客数の増加をより実感しており、顧客ライフサイクルを明確に区分してフォローアップを行う体制が、新規顧客獲得に大きく寄与していることが示唆される。

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 継続売上については、フェーズ分け運用を実施している企業では70.2%が「継続売上が増加した」と回答し、「減少した」は4.0%にとどまった。一方、フェーズ分け運用が未実施または状況が不明な企業では、「増加した」が47.6%、「変わらない」が45.0%。この結果から、フェーズ分け運用を行っている企業は、顧客のライフサイクルを明確に区分し、最適なタイミングでフォローアップを実施できるため、継続的な売上向上が期待できると考えられるという。

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 次のグラフは、カスタマーサクセス取り組み前後のアップセル率の変化をフェーズ分け運用の有無で比較したもの。アップセル率が「向上した」と回答した割合を見ても、フェーズ分け運用を行っている/試験運用している企業では60.7%に上る一方、フェーズ分け運用をしていない/状況が不明な企業では32.7%にとどまり、約28ポイントの差が見られた。

 フェーズ分けを明確に実施している企業では、顧客がどの段階で追加提案に応じやすいかを正確に把握でき、適切なタイミングでアップセル提案が可能になっていることが推察されるという。一方、フェーズ分け運用を行っていない/不明な企業では「変わらない」が45.0%、「低下した」が12.3%と、合わせて過半数以上がアップセル率の伸びを実感できていない状況がわかった。

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 NPS(ネット・プロモーター・スコア)については、「向上した」と回答したフェーズ分け運用企業の割合が58.0%と過半数を占めた。対照的に、非運用企業では29.6%にとどまっている。さらに、フェーズ分け運用企業で「この指標は把握していない」と回答した割合はわずか1.2%であるのに対し、非運用企業では10.7%と約9ポイント高く、NPSの測定自体が不十分な企業が多いことが明らかになった。

 これらのデータから、顧客の利用ステージを複数のフェーズに区切って把握することで顧客満足度や推奨意向を高めるためのフォローアップが的確に行われ、結果としてNPS向上につながっている可能性を示している。一方、フェーズ分け運用がなされていない企業では、顧客の声を継続的に収集・活用する仕組みが十分に整っておらず、NPSの変化を測定すらしていないケースが多いため、カスタマーサクセス施策の成果を十分に得られていないと考えられると同社は述べる。

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ツールの活用状況とフェーズ分け運用の関係

 また、ツールの使用状況がフェーズ分け運用の有無によってどう変わるかを検証。次のデータは、フェーズ分け運用企業を対象に、どのカスタマーサクセスツールを利用しているか、またそれに対して「効果を感じている」か「効果を感じていない/どちらとも言えない」かを比較したものだという。

 まず「顧客情報管理」は38.4%が効果を感じていると回答し、他のツールと比べても圧倒的に高い利用・効果実感率となっている。これは、顧客データを一元管理し、フェーズ分けされたステージに応じてフォローアップを最適化できるため、カスタマーサクセス施策の成果に直結していることを示唆している。

 「オンボーディング管理ツール」(18.8%)や「ヘルススコア管理」(13.7%)も、顧客の導入・定着段階を可視化するため、効果を得やすい傾向が見られた。これらは、顧客の早期立ち上げや解約リスクの早期察知に直結しており、フェーズ分け運用との相性が非常に高いと考えられるという。

 続いて、「AIによる顧客対応支援ツール」(8.3%)、「AIによるデータ分析・予測ツール」(7.1%)、「AIによる自動化ツール」(5.9%)はいずれも1割弱が「効果を感じている」と回答。これは、フェーズ分けと連動して顧客データの分析や自動化を実施することで、最適なタイミングでのフォローアップや効率化が進み、カスタマーサクセス施策がさらに強化されている可能性を示している。総じて、フェーズ分け運用企業は基礎ツールおよびAIツールを効果的に活用し、カスタマーサクセス施策を成功させていることがうかがえた。

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 一方で、フェーズ分け非運用層のツール利用状況を見ると、「特に利用していない」の回答が、効果実感層では7.7%、効果未実感層では48.0%に達している点が際立っている。

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サクセスロードマップのフェーズ分け基準と業績に与える影響

 最後に、具体的にどのような指標でフェーズを区切っているか、それぞれの指標が業績にどのような影響を与えているかを検証。まず、フェーズ分け運用層に対して、サクセスロードマップをどのようなクライテリア(基準)でフェーズ分けしているかを質問し、その回答をカスタマーサクセス効果の実感度別に比較した。

 その結果、カスタマーサクセス効果実感層では、ヘルススコア(単体・複合)とその閾値を用いる割合が合計で約9割(40.8%+50.5%)に上り、「ヘルススコア+期間」を組み合わせる層は7.7%、期間のみで分けている層は1.1%にとどまっている。これは、顧客の健康度や利用状況を数値化し、一定の基準(閾値)を設けることで、解約リスクの早期察知やアップセル機会の把握が容易になっていることを示すという。

 一方、効果未実感層では、複合ヘルススコア(59.9%)の利用が比較的高いものの、「ヘルススコア+期間」(23.1%)や「期間のみ」(6.8%)といった組み合わせが全体の3割を占めている。これらの結果から、効果実感層ではシンプルなヘルススコア基準(単体・複合)を明確な閾値とともに運用するケースが多く、顧客の利用状況や健康度を正確に把握できるのに対し、効果未実感層では期間基準を加えたり期間のみで分けたりなど、顧客ごとのリスクやアップセル機会を的確に把握できていない可能性がうかがえる。

 総じて、ヘルススコアを軸にしたフェーズ分けが明確であれば、解約防止や追加契約のタイミングを逃さず、カスタマーサクセス施策の効果を高められると推察されると同社は述べている。

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 直近1年間の新規顧客数の変化を「フェーズ分けのクライテリア」によって比較したところ、「単一の指標によるヘルススコアを用いる企業」が78.6%で最も高い割合、「複数の指標を用いる企業」でも70.2%が「増加した」と回答した。「期間のみ」または「ヘルススコア+期間」で定めている企業では、新規顧客数の増加割合が相対的に低く、「変わらない」「減少した」が比較的高い点が目立つ。期間だけに頼ると、実際の利用状況や健康度が正確に把握できず、初期導入やオンボーディングの段階で見逃しが起きやすいと推察される。これらのことから、シンプルなヘルススコアに基づくフェーズ分けが新規顧客獲得に有利であり、期間基準のみの場合は伸びが抑えられる傾向が見て取れると同社は述べる。

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 継続売上についても同様に、ヘルススコア(単一・複数)を用いたフェーズ分けほど、「増加」を実感している割合が高いという傾向が鮮明に現れている。単一のヘルススコアを閾値とともに運用している企業は76.0%、複数の指標を組み合わせる場合も63.1%が「継続売上が増加した」と答えた。

 一方、ヘルススコアと期間の組み合わせや期間のみをクライテリアにしている企業は、「変わらない」「減少した」の割合が高めとなっている。単一のヘルススコアを明確な閾値とともに運用することで、顧客の利用状況や健康度をシンプルに把握しやすく、解約防止や追加契約のタイミングを逃しにくいと考えられるという。その結果、継続売上向上に直結している可能性が大きいとしている。複合的な指標を用いる場合も一定の成果が確認された。複合指標は精度が高い反面、運用難易度が上がることから、単一指標ほどのシンプルさは失われるかもしれないが、顧客の状況をより多面的に把握できる利点もあると推察されるという。

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調査実施概要
  • 2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査
  • 調査方法:インターネットアンケート
  • 調査実施期間:2025年2月21~26日
  • 対象地域:全国
  • 対象者:20~65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)6万4138人

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