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企業の持続的成長を実現する「顧客資本経営」

Apple、Amazonらも実践する「顧客資本経営」とは──顧客接点を起点とした企業の成長戦略

第1回

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 「顧客資本経営」は、企業の持続的成長に不可欠な経営概念です。単なる顧客中心主義ではなく、「顧客との関係性を資本と捉え、その価値を最大化する」考え方です。市場環境の変化でオンラインの顧客接点が増え、広告依存の新規獲得が難しくなり、口コミやSNSの影響が強まっています。重要なのは新規獲得ではなく、既存顧客との関係を深め資産化することです。関係性を深めることで、顧客は“成長のパートナー”となり、成功体験が企業の成長を促します。今回は、日本企業がどのように「顧客資本経営」へと変革していけばいいのか、国内外の先行事例とともに解説します。

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企業の成長の原動力は移り変わっている

 企業の成長を支えてきた原動力は、時代とともに大きく変遷してきました。2000年代の「大量生産・大量消費の時代」から、2010年代の「顧客獲得の時代」、そして現在の2020年代「顧客共創の時代」へとシフトしています。それぞれの時代における課題と戦略の変遷を理解することが、顧客中心経営を実現するための重要なステップとなります。

大量生産・大量消費の時代(〜2000年代)

 この時代は「モノの時代」であり、マスマーケティング全盛期でした。需要が供給を上回っていたため、商品を作れば売れる環境が整っていました。企業はスケールメリットを活かして大量生産を行い、広範な消費者層に対して一律のマーケティングを行っていました。しかし、これはあくまで企業が主導権を握る時代であり、顧客との関係性は浅いものでした。

顧客獲得の時代(〜2010年代)

 デジタルの普及とともに、「コト消費」への関心が高まり、生活者は単なるモノの所有ではなく、価値を求めるようになり、体験を重視する傾向が強くなりました。需要と供給が均衡する中で、企業はデジタルマーケティングを駆使し、SEO、SNS広告、モバイルアプリなど多様なデジタルチャネルを活用して顧客獲得を最適化しました。

 しかし、このデジタルシフトには弊害も生じました。企業は顧客の行動をデータとしてトラッキングし、コンバージョン率や解約率などの数値で成果を測ることが容易になった結果、数字には表れない顧客の「生の声」が企業活動に反映されにくくなっていったのです。さらに、非対面チャネルの増加は顧客と直接向き合う機会を減少させ、深い関係性を築くことを難しくしました。結果として、解約率の増加やリテンション課題といった問題が顕在化し、単なる「獲得」だけでは持続的な成長を実現できないことが明らかになったのです。

顧客共創の時代(2020年代〜)

 現代は「顧客共創の時代」に突入しています。顧客体験(CX)の重要性が高まり、顧客が顧客を呼ぶ循環が成長のエンジンとなっています。企業は単独で価値を創造するのではなく、顧客とともに価値を共創し、長期的な関係性を築くことが求められます。

 この背景には、時代の流れにともなう構造的な変化があります。デジタル広告の普及で広告コンテンツが氾濫、デジタルの台頭は企業活動の透明性を結果として高め、ある種作られた情報でもある広告への信頼が低下しました。また、クッキーレス時代の到来によりプライバシー規制が強化され、顧客獲得コストは上昇の一途をたどっています。さらに、プロダクトやサービス自体が高度化し、価格やスペックだけでは差別化が難しい時代に突入しました。

 その結果、SNSや口コミが意思決定の中心となり、企業が発信する情報よりも既存顧客の体験や声がブランド価値を形成する力を持つようになっています。最近では、SNSやコミュニティで「◯◯のサービスを利用したことがある方、いらっしゃいますか?」といった投稿が頻繁に見られるようになりました。こうしたやり取りは、単なる口コミを超えた“リアルな体験談”や“生の意見”を重視するトレンドを示しています。この動きは、企業にとっては既存顧客の満足度が新規顧客の意思決定を左右することを意味しており、満足度がより重要な時代に突入していることを問題提起しています。

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顧客中心経営へのシフトがもたらす可能性

 現代の「顧客共創の時代」では、顧客の成功体験を中心に据えた経営が、既存顧客による新規顧客獲得の循環を生み出し、企業の成長エンジンとなります。つまり、「顧客を獲得する経営」から「顧客を成功させる経営」へのシフトこそが、今後の企業価値を大きく左右するのです。

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顧客資本経営の“本質”

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この記事の著者

野村 修平(ノムラ シュウヘイ)

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