コンセプト開発からローンチまで順調だった3年間
「ロボホン」の事業化にかかった期間は3年。景井氏は、「がむしゃらに進めていたものの、結果的には事業化に向けたステップを着実に踏めていた」と振り返る。
最初のステップは、コンセプト開発だ。当初は、スマートフォンに耳や尻尾をつけるといったアイデアもあったが、ユーザーインタビューでのインサイト探索や、ロボットクリエイター高橋智隆氏との出会いをきっかけに、ロボット“型”電話というコンセプトが浮上。イラストを描くなどしてイメージを膨らませながら、機能をデザインしていった。

その後、予算が限られていたこともあり、iPod nanoやプロジェクターのおもちゃなど、既成の素材を組み合わせて手作りでプロトタイプを開発。
それをもとに、コアターゲットユーザーの設定に進んだ。Web調査やグループインタビュー、デプスインタビューはもちろん、自宅に訪問して暮らしぶりや持ち物を調べる「行動観察調査」まで徹底的に行い、「ユーザーの解像度を上げられた」と景井氏は自信を覗かせる。

実際、これらのプロセスを経て導き出されたコアターゲットユーザーは「子どものいる40代以降の母親」であり、現在のユーザー層ときれいに合致している。
苦しみの事業計画策定プロセス
こうして企画の骨子とユーザーイメージが無事に確立したわけだが、「最も時間がかかった」と景井氏が語ったのは、その後の事業計画策定プロセスだった。ビジネスモデルや投資回収計画などを上申する度に却下され、「それまでの楽しかった開発プロセスとは打って変わって苦しみを味わうことになった」と苦笑する。

しかし、結果的にはこの過程で事業計画が洗練されていくことになった。クラウドサービスやアフターサービス、オプションサービスなど、端末以外の売上構成要素が揃うと同時に、商品開発から販路、物流、サービスまでイチから立ち上げ、バリューチェーンを構築。
続くプロダクト開発・ローンチ段階でも、華々しくメディアに取り上げられたことによって売上が増加し、そのまま勢いに乗るかと思われた。
ところが、その後が続かなかった。販売量が停滞し、いわば「暗黒の時代」を迎えたのだ。