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経営戦略としての人的資本経営

なぜ新規事業のアイデアは“とりあえず◯◯”になるのか──人間を理解し美辞麗句を疑う、新インサイト論

【前編】ゲスト:株式会社ストラテジーキャンパス代表取締役 中村陽二氏

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 本連載は「Biz/Zine Day 2025 Winter 経営戦略としての人的資本経営」との連動企画として、イベント登壇者たちが現在の日本企業における経営や戦略に対する問題意識を対談形式で語り合う。本記事では、イベントのクロージング講演「成長戦略としての事業創出における「人と組織」 中外製薬の成長戦略における人材マネジメントと組織」に登壇した、株式会社ストラテジーキャンパス 代表取締役の中村陽二氏と一般社団法人日本CHRO協会/一般社団法人日本CFO協会 シニア・エグゼクティブ 日置圭介氏の対談をお届けする。対談前編では、中村氏の著書『インサイト中心の成長戦略』(実業之日本社)の内容を起点に、新規事業開発で踏まえるべき「インサイト」とは何かについて議論が交わされた。対談の聞き手は、Biz/Zine編集部 編集長の栗原茂。

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御社の新規事業、“とりあえず◯◯”になってませんか

──まずは中村さんの経歴からご紹介いただけますか。

中村陽二氏(以下、敬称略):私はキャリアのスタートとして、外資の大手コンサルティングファームに入社しました。そこでは、製造やIT、資源などの業界でM&A支援や事業再生に従事。

 同社退職後には、人材・広告会社を買収し、経営者として事業再生を手がけ、その会社を売却し、売却先の取締役としてAIを活用した新規事業を売上高20億円にグロースさせ、東証グロース市場への上場も経験させていただきました。現在は事業創出支援を手がける株式会社ストラテジーキャンパスで代表取締役を務めるとともに、執筆・講演活動も行っています。

日置圭介氏(以下、敬称略):実に多様な経験を積まれていますね。私はいくつかのコンサルティングファームを回りましたが、中村さんからは「古き良きコンサル」の雰囲気を感じます。官や資本市場からの要請に対応するためのプロダクトやパッケージソリューションを売りがちな今時のスタイルではなく、クライアントと共にビジネスをゼロから築き上げるケイパビリティを売るという、良い意味でガツガツしたスタイルが感じられます。

──お二人には、中村さんが昨年9月に上梓された『インサイト中心の成長戦略』(実業之日本社。以下、本書)の内容を起点に議論を交わしていただきたいと思っています。まずは、本書の概要について中村さんからご説明いただけますか。

中村:本書は、新規事業の創出方法を3つのステップにわけて解説しています。

インサイト中心の成長戦略
図版出典:中村陽二『インサイト中心の成長戦略 上場企業創業者から学ぶ事業創出の実践論』(事業々日本社)を参照し、編集部にて作図

 ステップの一つ目が、事業領域の選定です。「まずは事業の領域を定めましょう」ということですね。当たり前のことのように思えますが、実は新規事業に取り組む多くの企業が、あらかじめ領域を定めていないのが実情です。そのため、世の中の森羅万象に潜む事業の可能性を検討しなければならず、かえって画一的なアイデアに着地してしまうケースが少なくありません。

 例えば、そのパターンの一つが「とりあえず◯◯」です。とりあえずAI、とりあえずヘルスケア、とりあえずサステナビリティ……、など。流行りのキーワードに流されてしまい、本来は自社に適していない事業領域を選定してしまうわけです。また、「趣味をビジネスに」もよくあるパターンです。自社の能力や意思を検討せずに新規事業を構想しようとすると、どうしても担当者の趣味に近寄っていってしまいます。結果として、自社の能力と無関係なペットやスポーツなど勝ち目のない新規事業に取り組んでしまうことがよく見られます。こうした事態に陥らないためにも、自社の能力を正確に把握したうえで、新たに進出する事業領域を選定しなければいけません。

 次に、二つ目のステップが「インサイトの発見」です。本書ではインサイトを「背景知識に基づいた現象解釈による戦略」と定義しています。つまり、ある環境や市場に対する背景知識を踏まえたうえで「こうすれば勝てるのではないか」という気付きを得ることが、「インサイトの発見」です。インサイトは戦略の中核を成す概念であり、インサイトと事業の実行能力さえあれば新規事業は創出できるというのが私の考えです。

インサイト中心の成長戦略
図版出典:中村陽二『インサイト中心の成長戦略 上場企業創業者から学ぶ事業創出の実践論』(事業々日本社)を参照し、編集部にて作図/クリックすると拡大します

──書名にも掲げられていますが、ここでいう「インサイト」はマーケティングなどで用いられる際の意味とは異なるわけですね。

中村:そうです。マーケティングでは「人間の行動を促す心理的な急所」といった意味で用いられることが多いですが、私は競争戦略の起点となる言葉としてインサイトを用いています。

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新規事業開発には「現場のブラックボックス化」が不可欠

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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