Google Xの職を辞し、Udacityに専念した理由
牧野:
そんな状況のなか、我々もどうしていかなければならないかをいつも考えているわけですけれども、Udacityに専念されるようになったのはなぜですか。
スラン:
長年Google Xを切り盛りしたあと、「人間の教育」に特化した会社を作ろうと思いました。Udacityでは、iPhoneやAndroidの開発者、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ科学者などの訓練をしています。人工知能の時代には、人間も適応していかなければならないからです。
今後、仕事に就くためのスキルセットは、過去とはまったく違ったものになります。今はスプレッドシートの入力ができれば事務の仕事ができますが、将来的にはそれだけでは仕事ができなくなります。人工知能の可能性の広がりに合わせて、人間ができることも広くしなければならない。教育によって人も「スマート」にし、仕事に就きやすくする。そのための新しい教育方法が求められています。
牧野:
(教育は)大学だけでは不十分ということですか。
スラン:
今後は、社会で当たり前に受け止められていることすべてに疑問を呈していかなければいけないと思います。あらゆるものが変革に巻き込まれていますから。将来のリーダーたちには、自由に考えることを教えるべきでしょう。 19世紀に考えられた大学制度を将来に適用できるのか。1回教育を受ければ、その後は何のトレーニングも受けなくても十分なのでしょうか。
物事の変化のスピードが速い現代では、学ぶことはライフワークになります。大学は、最良の顧客である学生を卒業後は手放してしまいます。これは大きな間違いです。大学は、生涯にわたる学びのパートナーとなるべきでしょう。
私たちは、教育を時代に合った新鮮な状態に常に保つ方法、自宅で学べる方法を考えなければならない。生涯にわたる教育は、物理的にどこかへ行って学ぶだけでは足りません。車や地下鉄やトイレのなかでも、土曜の夜でも、学べなければいけません。そのための解決策を提示する仕事をしたいと考えています。