シンギュラリティは「さりげなく、確実に」やってくる
牧野:
政府の行政管理システムにも人工知能をぜひ取り入れるべきだと話したところ、日本政府は人工知能をできるだけ業務に使いなさいという方針を出しました。それについてはどう思われますか。
スラン:
各国の政府がシンギュラリティのスピードに追いつけるかどうかは疑問です。AIが国の境界線を越えて地球規模で進行したら、あるいは政府によって規制されないビットコインが国際通貨になったら、どうなるでしょうか。一定の地域内に限らず、世界的にリソースを共有すべきだということになれば、税制も考え直さなければなりません。
シンギュラリティはどの国の政府にも大きな課題を突きつけますが、政府はオープンマインドであるべきでしょう。19世紀から20世紀にかけて整備された政府の仕組みでは、21世紀のスピードにはついていけないのは明白ですから。
牧野:
ターミネーターのような世界がくる可能性はあると思いますか。
スラン:
映画ではよくロボットが人間を破壊していますが、現実世界の「破壊」は映画のものとは違います。たとえばHUEは、仕事の効率を上げてくれるだけの非常にシームレスで無垢なツールに見えますが、重要な「破壊」をもたらしています。
ピンとこなければ、Googleを思い出してみてください。Googleはライブラリカタログを自社で所有しているわけではなく、ウェブ上をクローリングして情報を見つけてくるだけでジャーナリズムや出版をはじめ、多くの分野に破壊をもたらしました。真の意味での破壊は、とてもさりげない形で起こるのです。
ターミネーターより恐ろしいのは、むしろコンピュータウィルスが銀行や株式市場のシステムに侵入してきたり、飛行を攪乱させたりといったAIの負の側面です。