『21世紀の歴史』ジャック・アタリ氏が語る、グローバルな市場経済とローカルな民主主義の不均衡

ワークスアプリケーションズ主催「COMPANY Forum2015」ジャック・アタリ氏講演レポート

 12月10日、グランドハイアット東京にて、株式会社ワークスアプリケーションズが主催する、COMPANY Forum 2015が開催された。経済学者で欧州復興開発銀行初代総裁、『21世紀の歴史』の著者でもあるジャック・アタリ氏が「グローバルガバナンス」をテーマに講演を行った。今後ますます拡大していく市場経済が生み出す危機と、それを回避する新しい社会システムのあり方が語られた。

[公開日]

[講演者] ジャック・アタリ [取材・構成] 渡邉 悠太 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 事業開発 社会・公共 限界費用ゼロ ポスト資本主義

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ジャック・アタリ氏が警鐘を鳴らす「21世紀が抱える世界危機」

 『21世紀の歴史』の著者、アタリ氏は「この世界は、希望と課題と危険に満ちています」と講演の口火を切った。人類は再び岐路に立たされている。

20世紀初頭も今日のような状況に近く産業に大きなインパクトを与える技術革新が社会に大きな影響を与えていました。電気、石油、車などの今日溢れている技術は、ちょうど20世紀初頭に台頭し、民主主義の波もありました。幸福という概念、「世界はひとつだ」という認識に満ちていました。しかし、ムッソリーニ、レーニン、ヒトラーらが水面下で画策していることを誰も知りませんでした。

 我々人類が今後辿ることになる“21世紀の歴史”は、市場経済の行く末によっては希望にも絶望にも変わりうる。過去に例を見ないほどに市場経済が人類に対して力を持っているからだ。

 人類の歴史を経済の中心となる都市の変遷として辿ったときに、都市はギリシャからローマやヴェネチア、ロンドン、そして現在はシリコンバレーに代表されるカルフォルニアへ、つまり徐々に西へと移動している。これが20世紀間の法則だった。

 しかし、『21世紀の歴史』によると21世紀には新たな「中心都市」が生まれることはないという。変わりに、地球全体がこれまでの中心都市と同じ役割を果たすようになる。そこでは、人・物・金が特定の都市に流れ込むことはなく、流動的に移動を続け、企業もまた定住地を持たない。人はプロジェクト単位で雇用され、特定の企業に所属し続けるということがなくなる。よって、定住という概念もまた失われて、国家機能が衰退する。

 アタリ氏が警報を鳴らすのは、ここにある。市場経済が要請する合理性によって人の生活も企業や国のあり方も変わっていく。だが、それは必ずしも人を豊かにはしない。20世紀初頭に戦争があったように、21世紀にはフランス・ロシア・ベルギー・ナイジェリア・シリアといった国々がテロの脅威にさらされているような現状がある。市場経済がこの流れを加速させるかもしれない21世紀において、アタリ氏が語る未来予測が現実のものとして、姿を現そうとしている。それでは、市場経済が導く最悪のシナリオを見てみよう。

『21世紀の歴史』ジャック・アタリ著『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界

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