人工知能は、ビジネスをどう進化させるか
牧野:
GoogleカーやGoogleグラスといった製品は日本でも有名ですが、Google X自体は謎が多いので、どんな組織なのかをお聞かせいただけますか。
スラン:
Google Xを創設したのは、テクノロジーの限界を広げるためです。AIのようなハイリスクな技術を活用して、社会に大きな変革を起こしたいと考えたのです。面白いもののうち、まだ1%しかできておらず、99%はこれから出てくるでしょう。Google Xが生み出したGoogleブレインもAIのラーニングプロジェクトです。
牧野:
人工知能にアプローチする最初のきっかけは何だったのですか。
スラン:
AIには大学で出会いました。当時、AIは不人気で存在も信じられていなかったのですが、私にとっては人を理解する最良の手段でした。シンギュラリティはこれからくる、と確信していました。
牧野:
人工知能が我々に与えるインパクトについて、いろいろな方がいろいろなことを言われています。人工知能の第一人者であるスランさんから見て、人工知能によって社会はどう変わっていくか、特にビジネスパーソンの働き方や仕事そのものがどう変わっていくか。もっと言えば、人工知能は人間に取って代わっていくのか、お聞きしたいと思います。
スラン:
今のところ、人工知能は便利なものという程度に見なされていますが、その便利さは私たちのあらゆる仕事を大きく破壊する(disrupt)でしょう。
今日、アメリカや日本では、労働者の75%以上がオフィスで仕事をしていますが、その作業の大半はスプレッドシートのデータ入力といった反復的なものです。こういった作業をもっとインテリジェントにすれば、その仕事はなくなるでしょう。
弁護士、会計士、パイロットなども同様です。現時点でさえ、安全性においてAIの飛行システムは人間を凌駕すると認められています。悪天候下での飛行には、AIによるオートパイロット操縦が法律で義務づけられているほどです。ほかの分野も、効率性向上によって様変わりすると思います。この変化は、すでに起こりつつあります。効率性の高い仕組みを使って100人、1000人分の仕事を片づけられるようになるので、たいへん大きな革命です。