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AIによる経営インパクト創出

なぜ大企業の生成AI活用は「PoC止まり」で終わるのか。成否をわける「象徴的ユースケース」の作り方

前編

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「象徴的なユースケース」が組織の空気感を変える

 では、どうすればよいのか。成功の鍵は、「象徴的なユースケース」での成功にあります。判断基準は次の3つです。

  1. 価値の想起性:社内の誰もがその価値を直感的に理解できる
  2. 横展開の可能性:要素分解すると、社内の多様な業務に応用が利く
  3. インパクトの大きさ:対象人数が多い、頻度が高い、あるいはコスト負担が重い

 特に重要なのが、1つ目の「価値の想起性」です。かつて「出口」の見えないデータ基盤構築が活用されずに終わったように、生成AIでも同じ失敗が繰り返されようとしています。

 象徴的なユースケースで成功を収めると、社内から「あのプロジェクトはどう進めたのか」「自分たちの部署でも導入したい」という問い合わせが自律的に発生し始めます。各部門が「何が成功しやすいか」の肌感覚を獲得し、組織が自走し始めること。これこそが、後編で詳述する「AI Native」な組織への第一歩となります。

 象徴的なテーマを探る1つの解は、営業や工場といった、各社のビジネスの「コア領域」に真正面から取り組むことです。

 たとえば、日清食品グループは営業領域に焦点を当てたプロジェクトを成功させ、それを強力に社内発信することで、他部署からの自発的な要望を引き出し、AIの利用率約7割を実現したと報じられています。

 また、過去の失敗の棚卸しも有効です。かつてRPAなどで「自動化したかったが、当時の技術では不可能だった」領域は、非構造データや自然言語に強い生成AIの得意領域と合致する可能性が高いからです。三菱HCキャピタルでは、長年困難だった「非定型様式の見積書からの登録データ自動化」を生成AIで解決し、年間1.2万時間の削減という大きな成果を上げています。

図3:成果につながるテーマ選定、3つの条件

技術進化を見据えた「動的なロードマップ」を持つ

 技術の成熟度と業務の複雑性を天秤にかけた「動的なロードマップ」も重要です。

 モデルの性能や扱える情報量が広がれば、半年後には自然に解ける可能性が高い課題もあります。そうした領域は、あえて人のレビューを前提とした「半自動運用」としてクイックに立ち上げ、現場の知見を蓄積しておく判断が有効です。

 重要なのは、技術的な進展が期待しにくい領域に過度なリソースを投下しないこと。逆に、モデルの進化で精度向上が見込める部分において、現時点での精度にこだわりすぎてプロジェクトを停滞させないことです。

図4:技術進化を前提に、ロードマップを描く

成功企業で起きる「AI Native」な変化

 生成AIの成功例が積み重なると、現場の思考にも変化が生まれます。

 「業務プロセスは変えてよい。むしろAIに最適な形を教えてほしい」

 「精度が上がるなら、5分や10分待つのは問題ない。その代わり、完了通知が欲しい」

 こうした、AIの特性を前提とした要望が出てくるようになります。これこそが、AIに業務を合わせる「AI Native」な思考への転換点です。

 後編では、こうした象徴的なユースケースでの成功がどのように経営インパクトへと変わっていくのかを、縦・横の展開パターンと組織変革の観点から整理します。スピードと統制をいかに両立させるか、その実践論を掘り下げていきます。

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この記事の著者

小林 誉幸(コバヤシ タカユキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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