「デシジョンツリー」による意思決定の選択
デシジョンツリー
デシジョンツリーとは、その名のとおり、意思決定をツリー状に表現したものです。
デシジョンツリーの基本は、意思決定の対象となる「選択」を書き込むものですが、各企業で使用されている実態を筆者が観察したところでは、意思決定によって選択されるものだけでなく、結果的に発生する「事象」(シナリオ)も、一緒に記載されていることが多くあります。
「選択」の対象となる選択肢は必ずしも2つである必要はなく、複数あっても構いません。同様に、「事象」が複数存在しても構いません。「選択」も「事象」も、検討対象の複雑さに応じて選択肢と階層を増やしていきます。そうすると、どこまで細かくするのか、という問題に突き当たりますが、具体的なアクションとして現実的に取りうるかどうかが1つの判断基準になります。もちろん、自分の考えを整理する目的であれば、考えられるあらゆる選択肢を記載してもよいのですが、組織としての意思決定を行うのであれば、意思決定者に理解される範囲に絞り込んで単純化したうえで議論することをお勧めします。また、一度書いたデシジョンツリーを構造を変えて書きなおすことも、思考の整理とコミュニケーションの促進に役立ちます。書いたツリーがいまひとつわかりにくい場合には、再構成を試みると良いでしょう。
期待値計算
デシジョンツリーは、「期待値計算」にも便利です。期待値計算は、デシジョンツリーが無くても可能なのですが、デシジョンツリーを書くと説明が簡単になり、とても便利です。期待値は、下記のロジックで計算します。
(期待値) =(そのことが起きた場合の値)×(そのことが起きる確率)
たとえば、当選すれば1万円もらえる抽選があり、その確率は10分の1であるとしましょう。当選した場合の期待値は、10,000円×確率10分の1=1,000円となります。抽選券の値段が1,000円であれば、当選した場合には10,000円から1,000円を差し引いた9,000円が手元に残るので、
9,000 円× 10 分の1 = 900 円
が期待値となります。
抽選全体の期待値を計算する場合には、すべての場合を計算しなければなりません。上記の場合は当選する場合の確率しか計算に使っていないので、以下のような計算が必要です。
( 抽選全体の期待値)
=(当選した場合の期待値)+(外れた場合の期待値)
=(9,000 円)× 10%+(- 1,000 円)× 90%
= 900 円+(- 900 円)
= 0
つまり、この抽選の期待値はゼロ円です。当選した場合と外れた場合の確率を足すと100%になるので、抽選の結果生じるすべての場合が計算に含まれていることがわかる。しかし、文章だと、とてもわかりにくいですね。デシジョンツリーを書いてみると図9のようになります。
次ページでは、ハイリスクハイリターンで知られている医薬品開発プロジェクトの投資意思決定を例に、デシジョンツリーを活用した期待値計算を理解できるように解説します。