連載・コラム 戦略投資とファイナンス

戦略意思決定手法②分析・シミュレーションの活用

第6回

[公開日]

[著] 小川 康

[タグ] ビジネスモデル 競争戦略 ファイナンス

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不確実な戦略投資が“ギャンブル”にならぬよう、
成功確率をシミュレーションする

リスク分析

 不確実な戦略投資、たとえば医薬品開発などは、ギャンブルのようだ、とたとえられることがあります。ギャンブルでは、当る確率を考えながら勝負を挑むと思いますが、戦略投資についても、成功する確率をあらかじめ知る方法があれば、必要な対策を講じることができ、とても便利です。

リスク分析の例(仕組みの説明は、この後に記載)図3 リスク分析の例(仕組みの説明は、この後に記載)

 ギャンブルの例として、カジノのルーレットを考えてみましょう。ルーレットのすべての数字が正確に同じ確率で出る場合には、結局胴元が儲かる仕組みになっています。しかし、もしもある数字が出やすい傾向があれば、ギャンブラーが勝てる可能性があります。数時間遊んだ程度では、数字の出る確率に偏りがあるかどうかまでわからないでしょうが、同じルーレットを仮に1万回、回してみたらどうでしょうか。1万回試せば、統計値が得られ、確率がわかってきます。

 ビジネスにおいては、実際に1万回試してみるわけにはいきませんが、その代わりに、ソフトウエアを使って仮想的にシミュレーションを膨大な回数繰り返して統計値を得ようとする考え方が「モンテカルロシミュレーション」です。この名前は、まさにカジノのルーレット(モンテカルロは、カジノで有名なモナコ公国内の地名)が由来となっています。

ビジネスにルーレットの考え方を活用する

 カジノのルーレットでは、次にどの数字が出るかは誰にもわかりませんが(イカサマでなければ)、ある数字はあらかじめ定められた確率で出るように設計されています。この考え方をビジネスに活用すると、次のようなイメージになります。

 あるビジネスを単純化して、利益が販売単価、個数、製造原価の3つの要素(変数)から計算されると想定します。つまり、利益=個数×(販売単価-製造原価)です。そして、それぞれの変数に変動の範囲幅を想定します。つまり、この変動の範囲はルーレット盤で設定される目(数値)とします。そして、ルーレットを回して、それぞれの変数に代入する数値を決めていく、と考えることにします。

ルーレットで出た数字を使って利益を計算しているイメージ図4  ルーレットで出た数字を使って利益を計算しているイメージ
出所:不確実性分析実践講座の図表を一部改変

 このとき、1台のルーレットを3回使うのではなく、1つの変数が1台のルーレットと考えるので、この場合には3台のルーレットがあると考えます。

 シミュレーションのステップは以下の通りです。

  1. 1つずつルーレットを回す
  2. すべてのルーレットを回して数値が出揃ったら、それぞれのルーレットの数値(ここでは販売単価、個数、製造原価)にもとづいて利益額を計算する
  3. 1と2を繰り返して(たとえば1万回)利益を計算する(1万個の利益額が得られる)
  4. 得られた数値から平均値などの統計値を計算する

 このようなシミュレーションを行うと、仮想的に事業計画を1万回実施したとしたら、赤字になる可能性がどれくらいか、80%の確率でどの範囲に利益が収まるか、といったことが推定できます。

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