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戦略投資とファイナンス

戦略意思決定手法②分析・シミュレーションの活用

第6回

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分析・シミュレーションの効果

 戦略投資は、企業の新たな成長の柱となることを目指すものですから、新しいアイデアであるだけでなく、それなりの規模があり複雑さを伴います。そのため、意思決定者にとって、わかりにくい案件になりがちです。「分析・シミュレーション」は、複雑な計算・前提条件を、意思決定者が直感的に理解できるように整理して示す、強力な武器です。

 また、戦略投資における分析・シミュレーションは、さまざまな前提条件を設定して行われるものです。検討によって、前提条件が修正される場合には、分析・シミュレーションも修正し、質の高い意思決定に至るまで、何度も反復・修正すると良いでしょう。

 分析・シミュレーションを行う前には、前回ご紹介したインフルエンスダイアグラム等から、ビジネスアイデアの収益構造を把握します。たとえば、利益を計算する場合の「計算式(モデル)と要因(入力データ)」に整理します。そして、それぞれの入力データに関して、高い値を取る場合、低い値を取る場合などの、変動幅を考えます。

モデルを整理し、データに変動幅を設定する図1 モデルを整理し、データに変動幅を設定する

 実は、この図1は、連載第4回の図3と同じものです。戦略意思決定法でも、仮説指向計画法(連載第4回で解説)でも、計算式を整理し、確定していない要因に変動幅を考える点は、共通しているのです。

 それでは、まずは代表的な分析手法である「感度分析(トルネードチャート)」をご紹介します。

感度分析(トルネードチャート)

 売上げや利益などに対して不確実性をもたらす要因が複数ある場合、それぞれの要因の影響度を知ることは、ビジネス上とても重要なことです。このようなときには、各要因の影響度を分析する「感度分析(sensitivity analysis)」が効果を発揮します。

 不確実性をもたらす要因とは、たとえば今後のコストであったり、売上げであったりと、現場的な感覚でいえば「気になる」「心配になる」という要因のことです。考えれば考えるだけ、さまざまな心配な要因が洗い出されるかもしれません。とはいうものの、心配な要因すべてに対して、均等に対応するわけにはいきません。ビジネスの世界では、時間は限られていますので、対応すべき優先順位をつける必要が出てきます。

 優先順位が明確に決まれば、別の要因が気になるという意見が出たとしても、感度分析の結果を確認して、影響度の違いを簡単に説明することができます。感度分析は、それぞれの変動要因の影響度を知ると共に、限られた時間の中で、その後のタスクの優先順位を決める手助けにもなるわけです。

トルネードチャートの例図2 トルネードチャートの例

トルネードチャートの仕組み

 トルネードチャートは、1つの変動要因について、“値を最小から最大まで変化させたときの計算結果の変化量”の絶対値を横棒で示したグラフで表わされます。このとき、他の変動要因はすべて基準値に固定されています。つまり、他の変動要因は無視して、ある変動要因が変化した場合に計算結果に及ぼす影響だけを表示します。

 すべての変動要因について、同じロジックで計算を行った後、変化幅が大きい要因を上から順に表示していけば完成となります。トルネードチャートは、横棒の長さが長いものを上から順に表示するように描きますので、見た目が竜巻のようになります。これがトルネードチャートという名前の由来になっています。

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不確実な戦略投資が“ギャンブル”にならぬよう、<br /> 成功確率をシミュレーションする

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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