企業が思っているほど消費者はプロダクトやサービスの違いが分からない
戦略キャンバスは、顧客が自社のプロダクトやサービスを選択する理由(または、自社ではなくて他社を選択する理由)を視覚的に捉えるシンプルなキャンバスです。これは、プロダクトやサービスの全体を構成する要素の組み合わせとのそのレベルを選択することにより、ビジネスモデル内の価値提案にメリハリをつけ、その独自性を検証するために活用されるツールです(図1)。
対象が新規事業であれ既存事業であれ、またはブルーオーシャン戦略を採用するか否かにかかわらず、戦略キャンバスを定期的に描写してみることの意義は3つあると考えます。1つ目は、企業が思っているほど競合するプロダクトやサービスの違いを消費者は分かっていないことですことです(ある調査によると、企業経営者のうち80%は自社のプロダクトやサービスがきわめて差別化されていると回答しているにもかかわらず、そのように受け止めている消費者は8%に過ぎないという)。2つ目は、独自性のあるプロダクトやサービスであっても、時間の経過とともに安定志向への傾斜と競合の追随によって類似してくる傾向があるということです。3つ目は、プロダクトやサービスのライフサイクルの進展に伴って、顧客が重要視する要素が変化していくことです(一般的には、機能性、信頼性、利便性へと変わり、最終的には価格となる)。
まずは、戦略キャンバスの基本的な使い方について簡単に整理しておきましょう。
1. 競合を明確にする
業界内における主要な競合をピックアップします。顧客のジョブという視点より、代替プロダクトやサービスを加えることも良いアイディアです(「長距離を移動する」というジョブからみれば、航空サービスと長距離バスは代替の関係となります)。
2. 競争要因を明確にする
プロダクトやサービスを構成する主要な機能やコンポーネントもあれば、プロダクトに付随する関連サービスもあるでしょう(レストランにとって、店舗の雰囲気、アクセスの良さ、予約や駐車サービス、クレジットカード払いなども競争要因となり得ます)。
3. 戦略キャンバスを描写する
横軸に競争要因、縦軸に価格/サービスのレベルを置き、自社と競合の各々をプロットしていきます。プロットされた点を結んだものは、価値曲線と呼ばれます。なお、提供レベルは顧客の視点からスコア化されるべきです。
4. 戦略キャンバスを評価する
戦略キャンバスは通信簿ではないので、全ての要素において高いレベルにあれば良いというわけではありません。むしろ、競合に比べた自社の価値曲線にメリハリがあることが重要です。