「産総研-NEC 人工知能連携研究室」は6月1日から、産総研人工知能研究センター内に設置される。両者の共同研究により、これまで必要な過去データを十分に集めることが難しい状況によって、AIの能力が十分に発揮できないという課題を克服することが可能になるという。
「これまでのAI研究は、見える化、分析が中心だったが、社会的課題の克服のためにはそれだけでは不十分。非常時の対応や経営判断などの高度な問題を解決し、制御・誘導に結びつけるAIを目指す」(NEC 執行役員 西原基夫氏)
NECとしては産総研との共同で膨大な過去データの蓄積により、「未知の状況での意思決定」のための「シミュレーションとAIの融合技術」をめざすことが狙いだ。 また、産総研情報・人間工学領域 領域長の関口智嗣氏は「基礎研究と産業/商品化の橋渡し」を強調し、「日本の人工知能研究の総力を結集したイノベーションの拠点にしたい」と語った。 連携研究室長は、大阪大学産業科学研究所教授の鷲尾隆氏が務める。具体的には、以下の3つの研究開発プロジェクトが行われる。
1.シミュレーションと機械学習技術の融合 — 大規模災害や新製品の設計など原理的/経済的に十分なデータを収集困難な希少、極限、シナリオが関係する問題の解決方法論の研究
2.シミュレーションと自動推論技術の融合 — 未知の事象に対する人間の意思決定を支援するための、既存知識から新しい仮説を導出する自動推論技術、およびそれを検証するための仮想空間シミュレータ構築技術。
3.自律型AI間挙動調整 — Iによる自律制御が広く世に普及した際に必要になる、意思統一されていないAI間で挙動を調整する仕組みの研究
通常の条件下ではデータが収集できない特殊な物理条件の事象、災害、社会インフラの事故、こうしたものへのリスクの対策のために過剰な投資を削減するなど、経済価値、社会的価値をともなうAIを追求すると鷲尾氏は語る。 今後は優秀な人材の獲得のため専門分野からポスドクなどの研究者の採用、異種ユーザー企業との連携などを進めるという。
体制としては、鷲尾氏が室長、産総研、NECからそれぞれ専任のメンバーによる体制で3年間をめどに、基礎研究から応用開発までの活動を進める。