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【出張版】M&A Online

多くの革新的製品を生み出した名門ソニーのM&Aの歴史とイメージセンサー事業での復調

M&AアーカイブスVol.3 ソニー<6758>

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最盛期からの衰退

 90年代、ソニーは早くからインターネットの可能性と同社の持つ家電などのハードの技術と、音響・映像などのソフト系の技術とをつなげる重要性を認識していた。00年になると世界はITバブルに沸き、同社も早くからインターネットと連携させた製品づくりを行っていたことが功を奏し、過去最高の業績を記録した。

 しかし、00年をピークにITバブルの崩壊とともに同社の業績も急速に悪化し、これまでのような革新的な製品を生み出せなくなってくる。第三四半期決算発表時に03年度通期の業績予想の下方修正を発表すると、株式市場ではその後数日間ストップ安が続き、その影響が日本の株式市場全体に波及するという「ソニーショック」が起こった。

 00年以降、ソニーが急速に衰えたのは、かつて自社開発し大ヒットした製品にこだわり続けるあまり、時代の流れに沿った製品開発を行わず他社に遅れを取ったためと言われている。特にそれを顕著に表しているのが、同社の主力事業である音楽事業とテレビ事業である。

 当時、ソニーは世界最大のCD生産企業であり、CDやMDのウォークマンもヒットしていた。ところが、そこに米国・アップルのiPodが登場する。01年に販売したこの革命的な製品はたちまち世界中のユーザーを魅了することとなる。iPodはハードディスク型のデバイスであり、その登場はすなわちCDやMDを無用のものに追いやることになり、同時にソニーに対してCDとMDの売り上げからの決別という決断を突きつけることになった。市場の変化は、マイケル・ジャクソンなどの世界的アーティストを多数抱えるソニー・ミュージックにも押し寄せる。インターネット配信によりネット上で楽曲をバラ売りするようになり、収益源となる著作権を音楽配信の中でどう守っていくのかという問題に直面した。

 テレビ事業においても、当時ブラウン管でありながらフラット画面を実現した「WEGA(ベガ)」シリーズが世界的に大ヒットしており、同社としてはいずれブラウン管から液晶やプラズマになるとは理解はしていても、利益が上がっているものを捨て、不確実で巨額投資を伴う製品の開発をためらっていた。

 こうしたことから、ソニーは時代の流れに沿った製品開発に出遅れ、主力のエレクトロニクス事業の売り上げを徐々に減らし、赤字が続くようになる。そして、全体では売上高こそ一時的に伸びているものの、営業利益など、財務の健全性は損なわれていった。

エレクトロニクス事業の不振を支える金融事業

 エレクトロにクス事業が低迷する中、同社の収益源となったのが金融事業である。
 「ソニー生命」「ソニー損保保険」「ソニー銀行」などを傘下に持つソニーフィナンシャルホールディングスは、リーマン・ショック時を除いて安定的に収益を生み出している(図表1、図表2)。実は、こういった金融事業をソニーグループの一つとして取り入れることは創業者の一人である盛田昭夫氏の夢でもあった。

ソニーは70年代からハード部門とソフト部門を会社の両輪として拡充させることを目指していたが、それに加え、盛田氏は金融事業を持つことの重要性を感じていた。それは資金調達のためだけではなく、企業の信用性やバランスを保つ重要な存在になると考えていたためである。現在のソニーは「金融会社」だと冷やかされることもあるが、エレクトロニクス事業に苦戦する同社にとって、金融事業は自社のバランスを保つ重要な存在となっている。

■06~15年セグメント別売上高(図表1)

06~15年セグメント別売上高(図表1)出典:ソニーホームページ「IR資料室 業績発表文」( http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/er.html )より編集
注)モバイル・プロダクツ&コミュニケーションやホームエンタテインメント&サウンドなど、名称が途中で変更されている事業については、各決算期において比較を容易にするため、ゲーム事業、音楽事業に該当する売上高を差し引いたものをエレクトロニクス事業としている。

■06~15年セグメント別営業利益または損失(図表2)

06~15年セグメント別営業利益または損失(図表2)出典:ソニーホームページ「IR資料室 業績発表文」( http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/er.html )より編集
注)モバイル・プロダクツ&コミュニケーションやホームエンタテインメント&サウンドなど、名称が途中で変更されている事業については、各決算期において比較を容易にするため、ゲーム事業、音楽事業に該当する売上高を差し引いたものをエレクトロニクス事業としている。

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経済危機がソニーのM&Aを促す

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M&A Online編集部(エムアンドエーオンラインヘンシュウブ)

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