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【出張版】M&A Online

IPOに至らない“リビングデッド”なベンチャーはどこに向かうべきか?

日本ビジネスイノベーション代表取締役の西堀敬氏に聞く、会社継続学

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「株主構成」と「経営者」の両方ではなく、片方を変えてみる

株式会社日本ビジネスイノベーション 代表取締役 西堀 敬氏株式会社日本ビジネスイノベーション 代表取締役 西堀 敬氏

 上場できるかどうかはともかく、そのベンチャー企業が事業を長く継続できるのは、提供する商品やサービスに対して顧客からの厚い信任があるからです。投資した資金の償還期限が来た時、そうした価値ある事業を営む企業を継続させるためには、株主構成と経営者の2つを変えなくてはなりません。戦後生まれの中小・中堅企業では現在、この株主と経営者の変更が同時に起き、それが事業承継を難しくしている一因にもなっています。よって、一つずつの変換があってもよいと考えています。

 私は、究極の事業継続はIPOだと思っています。なぜならばIPOとは、株主構成を特定の株主から不特定多数の株主に移行することにより、株主移動が生じても経営者の交代は伴わないし、経営者も一般株主であれば会社の中で交代して事業を長期にわたって継続できる合理性があります。

 オーナー企業はそうはいきません。経営者が見込みのある社員に「経営者になってくれ」といったら、それはすなわち「株を買ってくれ」ということであり、借り入れがあれば、個人保証も背負わなければならないということを意味します。株式が5億円で借金が10億円なら、「15億円背負ってくれ」と言っているのと同じです。いくら愛社精神にあふれ頑張っている社員でも、さすがに決心するのは難しい。じゃあ究極の事業継続である上場を、とは言っても、冒頭でも触れたように上場できる企業は、それを目指す企業全体の数パーセントにすぎず、たやすいものではありません。

 もちろんM&Aで会社を譲渡する解決法はありますが、「事業を継続したい」「会社を残したい」と望むならば、いきなり資本も経営者も変えるのは大変ですから、経営者はそのままで株主構成だけを変える方法や、資本提携や業務提携で様子を見る方法もあると思います。それで相性が悪いようなら見直すこともできます。私が開催するセミナーでも、企業を継続させたいので株主となってくれる先、経営者となってくれる人を探しているという声を聞きます。事業継続に関して、私はもっと多様性があってもよいのではないかと考えています。

現状に満足している中小企業に未来はない

 日本経済はバブル景気で絶頂を極めた後に崩壊、いまだ低迷が続いています。長銀(日本長期信用銀行)、興銀(日本興業銀行)、日債銀(日本債券信用銀行)の長信銀3行が破綻や統合に追い込まれて姿を消し、それを皮切りに、銀行業界は大きな再編の波に飲み込まれていきました。都銀、長信銀などの大手16行は合併を繰り返し、現在の3大メガバンクにほぼ絞られたわけです。

 経済活動の大元を司る銀行がそれだけの事態に追い込まれたわけですから、大手企業をはじめ、すべての産業で統合と再編の動きが起こるのは必然です。もちろん、中小企業も傍観してはいられません。集約と淘汰の流れはまだ続いています。やがて中小企業は独立独歩で生き残るのが不可能になる状況がやってきます。中小企業も「Think Global, Act Local」の考え方に立ち、世の中の大きな流れを感じ取って対処していかないと、最終的には経営破綻にまで至ってしまいます。

 しかし、残念ながらいまだに「小ぶりながら安定している」ことに満足している中小企業経営者が多いのも事実です。「特段、大きくなりたいとも思わない、今ぐらいの給料を稼げればよい、今日のことを明日もできていればよい」といった具合です。ただそれでは、この先長くは続きません。そうした中小企業オーナーに対し、危機意識を植え付け、現在ある優れた技術や製品、サービスを継続して顧客に提供し続けることを可能にする手法を提示していくのは、日本産業の活性化のために重要な仕事だと感じています。

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企業の創業期と成長期では“使う筋肉”が異なる

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