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ImPACT、現代コンピュータを凌駕する「量子ニューラルネットワーク」を開発

光を使って難問を解く新しい量子計算原理を実現

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 内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT、山本喜久プログラム・マネージャー)は、研究開発プログラムの一環として、現代コンピュータでは効率よく解くことが困難とされている組合せ最適化問題の解を高速に求める「量子ニューラルネットワーク(Quantum Neural Network:QNN)」を実現した。  これは、NTT物性科学基礎研究所 量子光制御研究グループの武居弘樹主幹研究員、稲垣卓弘研究員らのグループと、国立情報学研究所(NII)情報学プリンシプル研究系の宇都宮聖子准教授、Peter McMahon研究員らのグループの研究によって実現されたものだという。 (図は「QNNによる2,000ノードグラフ最大カット問題(ランダムグラフ)の解探索結果」:(a) グラフ問題。ピンクの点が2,000のノードを、白線がエッジを表す。(b) QNNによる5msの計算時間で得た実験結果。ノードの集合が赤と青のノード群に分割された結果、13,313のカット数により緑線で示すエッジを切ることができた。

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 インターネット、電力ネット、センサネットなど、社会を構成するさまざまなネットワークが大規模化・複雑化する現在、リソースの最適化が重要な課題となっている。これらの課題の多くは組合せ最適化問題と呼ばれる、現代コンピュータが苦手とする数学的問題に帰着することが知られており、その課題を解決できる新しい計算機モデルの開発が期待されているという。

 また、現代コンピュータ技術を支えるCMOS電子回路の微細化技術が限界に近づき、18か月毎にコンピュータの性能が2倍になるというムーアの法則の終焉が現実のものとなってきた現在において、現代コンピュータとは計算原理が全く異なる新しい計算機モデルの必要性が認識されている。

 そのなかにあって、量子ニューラルネットワークは、光パラメトリック発振器と呼ばれる新型レーザの発振振幅を用いてスピンを表した時、相互作用する多数のスピンが全体のエネルギーを最低とするようなスピン配列で発振する現象を利用して、組合せ最適化問題の解を探索するものだという。

 今回、各光パラメトリック発振器の振幅を光ホモダイン検波器で測定し、得た情報を帰還する「量子測定フィードバック」を実装することで、全ての光パラメトリック発振器間の結合が可能な量子ニューラルネットワークを実現した。

 これにより、最大2,000ノード・200万結合の大規模組合せ最適化問題の解探索に成功し、現代コンピュータ上で動作する既存アルゴリズムを凌駕する性能を示した。今後、創薬、無線通信、圧縮センシング、深層学習といった実社会のさまざまな組合せ最適化問題への成果の適用が期待されるとしている。

 この研究は、NIIの河原林健一教授、東京大学の合原一幸教授、大阪大学の井上恭教授、スタンフォード大学のMartin Fejer教授の研究グループと共同で行ったもので、 研究成果を記述した2編の論文は、10月20日13時(米国東部標準時)発行の米国の科学誌「Science」のオンライン速報版で同時に公開される。

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