濱口秀司氏が考える「イノベーションに必要な3つの条件」
口火を切ったのは、 米国のデザインコンサルティング企業「Ziba」のエグゼクティブフェローであり、自身が創業した「monogoto」のCEOを務める濱口秀司氏。「デザインが企業経営に与えるインパクト」と題し、イノベーションに必要な3つの条件などを話した。
自身の肩書きをコンセプトクリエイター、シリアルイノベーター、ストラテジスト、「理論武装をする」手法マシン、年間で地球15周分ほど移動する「出張マニア」、ビジネスデザイナー、ドイツRedDotデザイン賞審査員……と、さまざまに表現した濱口氏。
これまでにもフラッシュメモリ、日本初のイントラネット、マイナスイオンドライヤー、ピクサーをはじめアニメーション制作会社に導入された大型タブレット端末、1年間で預金額を240%アップさせたアメリカ・オレゴン州のコミュニティバンクなど、先見的なプロダクトやプロジェクトを成功へ導いてきた、日本屈指のビジョナリーだ。
その濱口氏は、「イノベーションに必要な3つの条件」として下記3点を挙げた。
- 見たこと・聞いたことがない=脳のバイアスに反抗する
- 実行可能である(実行できないのはファンタジーである)
- 議論を生む(反対/賛成いずれも)
3点目については「全員がどちらかに偏ったらイノベーションにならない。議論は半々か、7対3くらいになると不確実性が上がってよい」。また、この3点で最も難しいのは「見たこと・聞いたことがない=脳のバイアスに反抗する」であるという。
このメカニズムを理解するためには、我々の脳を理解する必要がある。脳は基本作用としてバイアスをつくるようにできている。たとえば、「ドア」を認識し、「押したり引いたりすれば開く」と思えて行動に移すのもバイアスの一種だ。「道路に飛び出すと危ない」と考え、行動を自制するのも同様といえる。
驚きを生むには、いかにバイアスのかかっている方向に物事を進めないかが大事になる。たとえば、「ドア」を思い浮かべるなら「勝手に開く(自動ドア)」ことは、かつてを考えれば異常のように感じたことだろう(現代の我々にとってはすでに「バイアス」となってしまっているが)。
濱口氏は「毎日・大量の情報を習慣的に取り扱う専門家だからこそバイアスの罠にかかる」と話す。「正確に素早く判断をする仕事」を繰り返していると、なおさらそうだという。その他、濱口氏は今後、顧客が見る価値はデザインだけでなく「ストーリー」が重要になることなどにも言及し、「あなたの業界にあるバイアスは何ですか?」と観客に問いかけた。