ソニーとのオープンイノベーションの成果
WiLはこれまで大企業とベンチャーのマッチングを推進してきたベンチャーファンド。松本真尚氏は起業したベンチャーをヤフーに売却後、ヤフーでの新規事業の指揮などを経て伊佐山元氏らと共に、co-founderとしてWiLを設立した。日本のVCの中でもオープンイノベーションの重要性を説いてきた草分けだ。
その松本氏がソニービデオ&サウンド株式会社(以下、ソニー)と共同設立したのがambie株式会社だ。ソニーの音響技術を通じて、世界市場に向けた製品を発表していくという。
その第一弾として発表されたのが、「ambie sound earcuffs(アンビー サウンドイヤカフ)」、“聴きながら、コミュニケーション”をコンセプトに開発されたオーディオデバイスだという。
WiLにとっては、ソニーとのオープンイノベーションはこれが2回めとなる。最初は日本のIoT製品の先駆けとのいえるスマートロック製品『Qrio Smart Lock』だった。
今回はソニーのど真ん中といえる音響技術を切り出し世界に発信する。ターゲットは世界のミレニアル世代です。(ambie 松本氏)
没入から環境(アンビエント)へ。新しい音の“ながら聴き”の時代へ
「ambie sound earcuffs」はなぜ今「ながら」聴きをコンセプトにしたのか?開発責任者の三原良太氏はこう語った。
最大の理由は定額制音楽配信サービスの急成長によって、大量のコンテンツを垂れ流しで聴くスタイルが定着してきたことです。従来のアーチストやジャンルのプレイリストから、「Happy」「Relax」「Party」「Party」「Drive」といった感情やシーンによるプレイリストが主流になってきました。音楽は没入して聴く形から、環境として楽しむ“ながら”聴きの時代に変わってきました。(ambie 開発責任者 三原良太氏)
従来のヘッドホンで音楽を聴いていると、車の接近や駅のアナウンス、デスクワークの電話着信や同僚からの呼声が聞こえないという不安や危険があった。
このながら聴きイヤホンであれば、オフィスやスポーツ、ヨガなどのエクササイズの時にも装着することが出来る。音楽を楽しむだけでなく、クリエイティブな作業を行う際の集中力を高めるという効果も期待できる。
グローバル市場で展開し、打倒Beatsをめざす
松本氏が強調するのは、そうした新しいライフスタイル・プロダクツとして世界市場を狙っていくということだろう。オーディオ製品としては、ソニー製品として売り出した方が確実かもしれない。あえて新会社「ambie」の製品としてリリースする理由は、マーケティングや戦略上の狙いがあるのだという。
電化製品というより、人と音の関わりを変えていくライフスタイルの提案として世界に出していく。オーディオデバイスとしてだけでなく、ファッションブランドなどとのコラボレーションもおこなう。そのためSNSや新しいチャネルでのマーケティングを行い、パロアルトに本社のあるWiLの強みをいかし、アメリカ市場を狙っていきたい。(ambie 松本氏)
価格は5,500円(税引)で、販売チャネルは自社サイトやセレクトショップ型の家電販売店。初期の出荷や販売台数目標についての具体的な数字は明らかにされなかったが、三原氏は「毎日に一回はつけている人を見かけるようにしたい」と述べ、松本氏は「打倒Beats」と付け加えた。