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新規事業開発マネジメントの要諦

新規事業の方針や戦略の策定につながる全社ビジョンの描き方──“なぜ”と“どの領域”を定義する

第3回

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 本連載では、日本の大企業からベンチャー・スタートアップまで幅広い企業の新規事業開発の現場に携わってきた筆者の経験や視点から、VUCA時代と称される現代の経営における新規事業開発やイノベーション創出への取り組みをご紹介。現場の新規事業開発の責任者や担当者だけではなく、それを牽引しマネジメントする立場にある方にとっても重要なエッセンスについて、新規事業開発プロセスの全体像や各フェーズにおける課題や解決アプローチについて考察します。第3回となる本稿では、前回紹介した「ビジョンや新規事業開発に関する方針・戦略が存在しない」という課題にフォーカスを当て、これに対する処方箋として、「いかにしてビジョンを描き、新規事業開発の方針や戦略を策定するか」について解説します。

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「7つのSTEP」 で新規事業開発の全体ストーリーを描く

 前回までで説明したとおり、再現性の高い新規事業開発を継続していける「先進的企業」へと変身していくためには、「経営トップの強いコミットメント」と「中長期の時間軸で健全な多産多死に取り組み続けること」が重要です。そのためにはまず、全社的なビジョンとその実現に向けた新規事業開発の方針や戦略を策定し、それを共有して浸透させることに取り組まなければなりません。

 よくあるのが、いきなり個別の事業構想や戦略を練ることから始めてしまうケースです。これは主にスタートアップに適した進め方だといえます。1つの事業やプロダクトに集中して急激な成長を志向するスタートアップは「事業のビジョン≒全社のビジョン」「事業の戦略≒全社の戦略」となるフェーズが存在するため、その事業やプロダクトの成長こそを最優先するべきであり、全社的なビジョンや方針・戦略を改めて策定する必要性は相対的に低くなります。

 しかし、安定した収益を上げる既存事業を待つ大手や中堅の企業において、新規事業開発は「ビジョンの実現に向けた全社戦略や成長戦略の中で取り得る選択肢の1つ」にすぎません。企業にとって新規事業開発やイノベーションは、あくまでも手段であって、目的ではないのです。

 そこで必要となるのが「インキュベーション戦略」という考え方です。このビジョンに基づく新規事業開発全体の方針や戦略を策定する段階では、具体的にどのようなステップで検討するべきでしょうか。筆者は以下の図のように定義しています。

クリックすると拡大します

 この7つのステップを明確にし、経営層がストーリーとして語り続けることが、新規事業開発全体の方針や戦略を共有し、浸透させていく上で重要です。

 もしこれが曖昧であったり、明確に策定されていても経営層のコミットメントや社内への発信が弱かったりする場合は問題です。経営層と実際に新規事業開発に取り組むチームやメンバーとの間に、意志や認識の大きな乖離が生まれてしまうからです。

 現場が経営層の意図や新規事業に取り組む意義を理解できないまま不確実性の高い困難なプロジェクトを任せられると、当事者意識を持てない状態で、暗中模索を続ける状況に追い込まれます。当然、成果は上がりにくくなり、成功確率も大きく下がってしまいます。

 また、現場主導で懸命に進捗させている新規事業プロジェクトがあっても、それが全社的な方針や戦略と合致していないため優先度が下がり、プロジェクトの縮小や中止・撤退を余儀なくされることもあります。

 結果として、現場のモチベーションは大きく低下し、今後の新規事業開発や健全な多産多死の土台となる「挑戦しやすい組織文化の醸成」を大きく阻害する要因にもなり得るのです。

 この傾向は企業の規模や既存事業の数が大きいほど顕著になるため、大企業になればなるほど「ビジョンとその実現に向けた新規事業開発の方針や戦略」を策定する重要性が増していくことになります。

 次ページからは、このビジョンやインキュベーション戦略を策定するために各ステップで具体的にどのような検討をすべきかご紹介します。

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この記事の著者

北嶋 貴朗(キタジマ タカアキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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