オープンイノベーションの本質は、“外部の力”ではなく、“内側から殻を打ち破る”こと

Biz/Zine Day 2017 Spring 「オープンイノベーション」の現在と未来 レポートvol.6

[公開日]

[講演者] 小林 泰紘(株式会社biotope) [取材・構成] 近藤 世菜 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 オープンイノベーション

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イノベーションの創造に組織の変革が不可欠

小林 泰紘小林 泰紘 氏(株式会社biotope) Creative Catalyst / Intrapreneurship Enabler
世界26ヶ国を旅した後、株式会社Impact HUB Tokyo 創業メンバーとして、社会的事業を行う起業家支援に従事。その後、顧客中心デザインをベースとしたビジネスコンサルティングファームにて、金融、人材、製造など幅広い業界の大手企業の事業開発やデジタルマーケティング支援、顧客体験(UX)デザインを手掛けた。現在は共創型デザインファームbiotopeにて、企業のR&Dや新規事業開発、未来ビジョン策定を支援する他、クリエイティブな組織への変革支援やイントラプレナーシップ醸成プログラムの企画・開発支援などにも携わる。社内外を巻き込んだ共創型イノベーションプロジェクトのファシリテーションや事業創造型人財の育成を軸に、企業の事業創造・組織づくりを伴走する。東京大学経済学部卒。通訳案内士。

 1つ目は、イノベーション創造のために組織の変革の視点が不可欠になってきていることだ。その背景には新陳代謝のスピードが急激に高まっている現在の市場状況がある。

たとえば、アメリカで動画市場を独占していたレンタルチェーン、ブロックバスター社は、2004年にNetflix社が登場してからたった6年、2010年には国内の店舗をすべて閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれています。

 なぜ現在の社会は、こんなにも変動性が高いのか。その根源的な理由はIT技術の発展によるネットワークの驚異的な拡がりにある。あらゆるものがネットワークを通してつながっている現代において、新規事業の“初期段階”において、そのカタチがどのようなものであることが望ましいかを予測することは不可能なのだ。

不確実性が高く変化の予想ができない社会では、初動の早さと回数が鍵であり、プロトタイプ型の組織のあり方やケイパビリティが求められます。

 予測が不可能な社会においては、たとえどんなに優秀な人材であっても正しい答えを導き出すのは困難だ。だからこそ、イノベーションを起こし”続ける”組織づくりのためには素早いトライ&エラーが不可欠になってくる。そして、自律性に基づいた行動と失敗を許容する組織文化が必要なのだ。

かつて世界的なカメラメーカーだったコダック。デジタルカメラの登場で業績不振に陥りましたが、実はデジタルカメラのプロトタイプを世界で初めて開発したと言われているのは当時のコダックの社員でした。次の未来を描く人材が組織の中にいるにも関わらず、いわゆるイノベーションのジレンマや硬直化した組織環境の中で、彼に挑戦の場が与えられることはなかったのです。

コダックの失敗

 では、先進的な企業は、どのように組織のなかに眠っている才能やアイデアを発掘し、挑戦の場を与えているのだろうか。成功例としては、アドビ社が行っている「キックボックス」がある。

 この社内イノベーションプログラムのユニークな点の一つは参加者全員に配布される10万円のプリペイドカードだ。使い道は本人に一任されており、新規事業開発のために使っても、プライベートな活動に使っても構わない。しかも期間や締め切りはなく、上司の承認を得る必要もない。

 実際、財務から大きな反発があったと言うように、「Adobe Kickbox」は一見無為に資金をばらまいているかのように思える。

 しかし、プロジェクトの発案者マーク・ランドール氏は「組織の目的はイノベーションを起こすことではなく、イノベーターを育てること。そのためには挑戦の場を与え、失敗を許容する文化を醸成することが大切だ」と語っている。

新たなものを生み出すためには原動力となる思いや情熱が必要です。そしてそれが湧き出るタイミングは人それぞれ。組織の都合でプログラムを押し付けるのではなく、思いや情熱が芽生えたときに組織として挑戦の機会を与えることが大切であり、そうした自律的な動きを組織の中で加速させることが今までになく重要な時代になっています。

Adobe Kickbox

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