DropboxとBoxのジョブは何が違うのか?
具体的な例を挙げていこう。DropboxとBoxはいずれも同時期に登場し、似たようなクラウドストレージを提供している企業である。いずれも「人と手軽にデータを共有したい」というジョブを解決することで成長したが、そのアプローチは若干異なる。Dropboxは今となっては法人もターゲットにしているが、当初スタートアップやフリーランスといった個人に近い小規模な事業をターゲットにしていた。同じプロジェクトで働く人をメールで招待するだけで、共有のクラウドストレージがセットアップできる手軽さでユーザを急速に獲得した。一方のBoxはもう少し大きな企業の管理者に向け「データ共有用のストレージの管理を手軽にする」という価値を打ち出している。ここで注意したいのが、「ストレージの管理をする」というジョブは、IT管理部門が持つジョブであり、各ユーザのジョブではない点である。そのため、BoxはIT管理者向けにマーケティングや営業活動を行っており、Dropboxと比べると個人レベルでは気軽に使いにくい反面、グループ管理やセキュリティの機能を充実させている。「データ共有をする」ことと、「データ共有システムの管理」は、似て非なるジョブであり、その解決策を提示していくには異なるアプローチになるのだ。Dropboxは同期スピードがとても早いことに驚くが、これも「共有する」というジョブにとっては重要なスペックである。一方で、Boxは管理画面がとても使いやすい。同期スピードはDropboxに追いつかないが、管理者にとっては管理画面の使いやすさは重要なスペックである。ちなみに、このようにジョブの解決の度合いを示す性能をジョブスペックと呼び、後ほど詳しく解説する。
B2Bビジネスのステークホルダー
程度の差はあるが、B2Bビジネスは比較的複雑であることは前述した通りだ。そしてそのステークホルダーが多いほど複雑さは増す。各種のステークホルダーを以下の4分類に整理することで紐解いてみよう。