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クリステンセン「ジョブ理論」入門

B2BとB2C、ジョブの違いを見極めよう

連載第五回

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成功するB2Bサービスは現場のジョブを理解している

これまで述べてきたように、法人向けビジネスは複雑だ。だが、B2Bビジネスを展開するからといって、必ずしも複雑にジョブをとらえることはない。米国Salesforceの例がそれを示している。Salesforceは、従来IT部門が購入していたCRMソフトウェアを営業部隊に提供し、SaaSビジネスを確立した会社だ。単にCRMを営業部門に売り込んだだけではない。金額も営業部長が決済できるレベルにし、IT部門のサポートがなくても導入ができるようにしたことが大きな特徴だ。Salesforceだけではない。普及しているSaaS系のサービスは現場のジョブを上手に解決している。従来用いられていたSI系のシステムは現場の問題を解決すると言いながら、とても多くのステークホルダーを絡めたシステムになっているのが実情だ。現場だけでなくIT部門のジョブを解決しなくては受注にこぎつけない。さらに、経営層のジョブを解決しなくてはならないほどの価格になっているため、コンサルタントがシステム導入の妥当性を検証するなど、経営レベルのサービスを提供が必要だ。すると、さらに費用がかかる傾向が助長される仕組みになっている。SaaS系サービスがシンプルなのは、解決するジョブを絞っているためとも言えるのだ。

SaaSを例に挙げたが、大掛かりな製品をバラバラにして小粒なサービスに分解することをアンバンドリング(Unbundling) といい、破壊的イノベーションを狙うスタートアップの一形態として知られている。受益者のジョブに特化することで製品を単純化すると同時に、価格を劇的に下げる戦略である。裏を返せば、垂直統合した総合的ワンストップサービスを提供している企業にとって、アンバンドリングは脅威だ。もし顧客企業のさまざまな部門に根回ししないと売れないような製品やサービスを提供しているなら、そこをついてシンプルな製品を投入してくる企業が参入してくる可能性がある。

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津田 真吾(ツダ シンゴ)

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