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教育に革新を。IT教育を推進するライフイズテック・水野雄介社長の野望

ライフイズテック・水野雄介社長(1)

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中高生向けのプログラミング教育を提供するライフイズテック。教育×ITで子供たちがプログラミングを楽しみながら学べる環境を作ることを目指す代表取締役の水野さんに、今後の目指す未来についてお話をお聞きした。

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薮崎 ライフイズテックの事業について簡単にご紹介いただけますか。

水野 中高生向けのプログラミングの『キャンプ』と『スクール』を提供しています。キャンプは、春休みや夏休みなどに3~8日間集中的にプログラミングを学んでもらえるようにしており、スクールは1年間通学してもらって学べるようにしています。実はオンライン教育として、MOZERというサービスを開発しており、本番リリースを2017年冬~2018年春に予定しています。

薮崎 どのようなきっかけで起業されたのでしょうか。

ライフイズテック株式会社 水野雄介社長

1982年、北海道生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒、同大学院修了。大学院在学中に、開成高等学校の物理非常勤講師を2年間務める。その 後、株式会社ワイキューブを経て、2010年、 ライフイズテック株式会社を設立。14年に、同社がコンピューターサイエンスやICT教育の普及に貢献している組織に与えられる “Google RISE Awards ” に東アジアで初の授賞となるなど世界的な注目を浴びている。日本のIT界にイチロー並みの人材を送り出す!を目標に世界を駆け回る日々を送っている。

水野 もともとは起業しようとは思っていませんでした。『教育』に興味をもっていたので、教員免許を取って、大学院に通いながら開成高校で非常勤講師をしていたんです。教師になろうかなとも思いましたが、自分が社会に出ないと教えられないことも多いと思い、ワイキューブという企業に入社しました。当時は、会社で働くのは3年間と決めて、また教職に戻ろうと考えていました。

 でも就職して3年が経ったときに、ちょうどキッザニア(子ども向け職業体験型テーマパーク)がオープンから5年くらいの時期で、とても盛り上がっていたんです。それを見て『時代は教育の新しいサービスを求めている』と感じました。なので、学校の先生には戻らず、教育で起業という道を選びました。教育ありきで、事業内容もその点から考えていきました。

薮崎 どうして中高生向けのプログラミング教育を事業にしたのですか?

水野 まずライフイズテックを立ち上げるにあたって最初から『中学生と高校生の教育のための事業をしたい!』という思いがありました。というのも、最も重要で可能性を持っているのに、最も教育が遅れているのが中高生の6年間だと感じていたからです。

 自分が中高一貫校で育って『一律の教育』に疑問を感じていたことも影響していると思います。いい面もありましたが、進学校ということでやりたいことを制限される場面も多くありましたから。

 あとは開成高校で非常勤講師として働いた経験が大きいです。高校生に物理を教えていたのですが『ゲームを作りたいけど、どうやって作ったらいいのか』、『こういうアプリを作ったから見てほしい』とやってくる子がいました。パソコンを学びたい子が結構多かったのです。今ではプログラミングに対して肯定的になってきていますが、当時はオタクっぽく見られるというか、ネガティブな風潮もあり、子供のやりたいことを大人がうまく褒めながら伸ばせていないと感じていました。プログラミングは伸ばすべきスキルなのに、取り巻く環境が理解しておらず、伸ばす手法=教育も確立されていなかったのです。

 なので、伸びる時期×伸ばすべきスキルということで中高生向けのプログラミングに焦点をあてました。

最初のキャンプは参加者3人。事業を軌道に乗せるまでには3年かかった

薮崎 最初のプロジェクトと、事業が軌道に乗るまでの経緯について教えてください。

水野 一番最初はキャンプを行いました。中高生を大学に呼んで、3〜5日間でプログラミングを集中的に学ぶというものです。カリキュラムの内容はライフイズテックを立ち上げたメンバー3人で試行錯誤し、大人向けの教科書を中高生向けに改変したりして、カリキュラムを作りました。中高生の中で結構プログラミングができて有名な子と連絡を取り合ったり、Twitterでやりとりして教えてもらったこともあります。

 基本的に、教師の仕事は難しいものをわかりやすく楽しく伝えることだと思っています。だから、まずはどういうカリキュラムだったら楽しんで理解してもらえるか、という発想から考えて形にしていきました。最初のキャンプでは、iPhoneのアプリを作るコースと、ゲームを作るコースの2つを用意しました。

 さらに、日本人は外国からの文化や技術に魅かれるところがあるので、その要素も取り入れるようにしました。キッザニアがあれだけ成功したのも、メキシコ発という要因があると思うんですね。なので、スタンフォード大学のITキャンプを見学したり、シリコンバレーでやっていることを参考にしたりして、東京大学と慶應大学でプログラミングキャンプをやってみたのです。

 ベンチャーなので、知名度もお金もないところからスタートして、集客も資金調達も課題は山積みでした。

 結果として、最初のキャンプに集まってくれたのは3名。

 そこから始めて、1年目は7人集客のキャンプを5回開催、翌年の夏は300人、その次が1,000人、そして次が3,000人、と倍々に伸びはしましたが、軌道に乗せるにはそれだけの苦労がありました。社員が自社の事業だけで食べていけるようになったのは3年目くらい。1〜2年目は企業の研修を手伝ったり、兼任でいろいろなことをやりながら取り組んでいました。

薮崎 近畿ツーリストと提携したプログラミング教育付き修学旅行のサービスを開始されましたが、そのサービスの背景や現状について教えてください。

水野 修学旅行に組み込むプランは、近畿日本ツーリストさんと5年くらいずっと話をしてきて、ようやく芽が出た企画です。『プログラミングに興味があって学びたいけれど、参加できない』という地方格差の問題を解決できる大きなカギとして、修学旅行があるとずっと考えていました。

 東京に観光に来て、スカイツリーに登って国会議事堂へ行って・・・だけではなく、キャリア教育というか、職場体験のようなことをできるのは面白いのではないかと思います。

 生徒全員が来ない学校もあります。学校側でいくつかコースを選べるようにして、オプション的に体験したい子だけが参加するケースも多いですね。ただ参加してくれた子たちは、プログラミングができる子が0人とか1人っていう状況でも、めちゃめちゃ盛り上がります。実際に動くプログラムを作るというのは、テンションが上がるみたいです。そもそも修学旅行に来ている、という時点でテンションは高かったのかもしれないですけれど(笑)。

 世の中全体の流れと同じように、モノ消費じゃなくてコト消費、つまり体験型の商材が良く売れるというのは、近畿日本ツーリストの方もおっしゃっていました。特に、ここ10年くらいで流れがかなり変わってきていると感じます。『お土産を買う』『観光する』だけじゃなく『東京で働く』という体験をさせてあげたいと、そう考える学校が増えているのではないでしょうか。

 他にもオーストラリアやシンガポールで会社を作ったり、オックスフォードでキャンプしたり、自治体向けのプログラムを開始したりと、様々な機関や地域と連携しながらサービスを広げています。

中高生を教えることによって大学生も育つという副産物

薮崎 ビジネス面から、Life is Techという教育サービスがユニークである点はありますか?

水野 僕らのイベントでプログラミングを教えるのは大学生なので、中高生のための教育でありながら、『中高生を教えることによって大学生が育つ』という図式も成り立つんですね。そういった場(キャンプ)で育った大学生は、他の企業にとっても新卒で欲しい人材だよね、ということでIT業界の人材育成として、協賛していただいています。

 あとはビジョンへ共感いただき、長期的な視点でのIT業界の投資と考えていただいているケースが多いのではないかと思います。ジャフコさん、キッザニアさん、DeNAさん、リクルートさん、イーストベンチャーズさん、孫泰蔵さんが社長をされているMistletoe(ミスルトウ)さんとか。

 それから、サイバーエージェントさんとは僕らライフイズテックがノウハウを出して、人材と出資はサイバーエージェントさんという形で、小学生向けのプログラミング教育のジョイントベンチャーもやらせていただいています。小学生向けのプログラミング教育はニーズがあるんですが、僕らだけではパワーがなくて、サイバーエージェントさんから『ぜひ一緒にしましょう』というお話があって、形になりました。

 また、KSKエンジェルファンドは、理念の一致といいますか、ビジョンへの共感によるものが大きいですね。資金調達の交渉期間を締める直前にファンド設立のニュースを見て、本田圭佑さんが教育について興味をお持ちということは知っていたので、共通の知り合いにすぐにLINEをつないでいただいて、連絡のやりとりから少しお話をして調達しました。資金調達は、1回目の総額は3億円で、2回目の総額は7億円です。かなり拡張しましたね。

 そうして集めた資金の使途についてですが、一番はオンライン教育サービスの開発ですね。キャンプやスクールは、格差の問題を無視することができません。つまり、開催場所の立地や金銭的な理由で、来たくても来られない子がどうしても出てくるんです。

 『やりたい子がしっかり学べる状態を作らないといけない』ということはつねづね感じていて、問題解決のため、どこでも学べるオンライン教育についても計画しています。それができれば会社としてもプラスになるわけですし。そのシステム開発に、今は一番お金を使っています。

 最近では、アメリカや日本の学校でもライフイズテックの開発したシステムを使ってもらっています。そうやってチームで開発を続けながら、さらにコースを増やして売っていけたらと考えています。

薮崎 将来的なビジョンについて聞かせてください。

水野 将来的には21世紀の教育変革というところまで、ビジョンを描いています。教育を変革するためのアイディアのひとつとして、学校教育の変革もあります。それを2020年くらいからスタートできればと思っています。

 具体的には、ライフイズテックが民間企業として学校の経営や運営に関わっていきたいと考えています。現在の日本では教育予算がどんどん減っていく傾向にありますが、良い教育のためには、株式会社の仕組みのように予算を外部から調達する必要があると考えています。学校のより良い経営や運営のために、リクルートが株を持ちます、サイバーエージェントが持ちますというような仕組みが作れたら面白いなと思っています。

 学校の運営と経営を分けることで、従来の学校が困っている問題を解決して、いい学校、いい教育ができるのではないか、と考えています。そのためには、まず自分たちが一つこういうものが最高ですよねって提示できる理想の学校を作らないといけないですけどね。そういうことをやっていけると、日本の学校教育も少しずつ変わってくるんじゃないかと思います。

※インタビュアー:薮崎敬祐(やぶさきたかひろ)株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、自動車販売など様々な事業を展開。あったらいいなではなくなければならない領域に、新しい仕組みを提案している。

本記事は提携サイト『異端会議』(http://itankaigi.com/)の一部転載です。

 本記事の続きはこちらの「異端会議」のページをぜひご覧ください。

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