カスタマーサクセスが事業に与える好影響――“顧客の成功”を自社の利益につなげる戦略とは?

第2回

 前回の記事ではカスタマーサクセスが注目されている理由と、日米の現状について説明しました。今回はカスタマーサクセスが事業にもたらす影響と、その全容についてご説明します。なお、今後カスタマーサクセスについて語る場合、主に法人向けサービス(BtoBサービス)を前提としているものとします。

[公開日]

[著] 山田 尚孝

[タグ] サブスクリプション カスタマーサクセス Sansan SaaS

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企業でカスタマーサクセスが果たすべき3つの役割

 カスタマーサクセスのもたらす事業インパクトを語る前にカスタマーサクセスが果たすべき役割を確認しましょう。私は以下の3つに集約されると考えています。

  1. 解約(Churn)の削減
  2. 追加受注(Negative Churn)の増加
  3. 紹介案件発生(2nd Order Revenue)のための種まき

 ではこれらの説明を通じてカスタマーサクセスの事業貢献について見ていきましょう。

解約(Churn)の削減

 サブスクリプションモデルで最も避けなければならないのが解約であることは言うまでもないでしょう。いくら新規の顧客を獲得しても、それ以上に解約が発生していては事業の成長はありません。解約のことを専門用語で「チャーン(Churn)」と呼びます。ほんの数年前まではあまり馴染みのない言葉でしたが、カスタマーサクセス界隈では既に一般的なワードになっています。

 チャーンの増加がもたらすインパクトは直感的には理解できますが、その深刻さを数値ベースで理解している人はあまりいないのではないでしょうか。以下のグラフは毎年100の売上がベースで存在し、解約率が3%、5%、10%、15%、20%、25%で20年間推移した例です。

解約率と追加受注率、年間定額収益の推移

 3%と25%では20年で約5倍の差が発生することになります。単月で見た場合そのインパクトはわずかに感じますが、長い時間が経つと複利効果でその差額は無視できないものになります。単月で見た場合そのインパクトはわずかに感じまずが、長い時間が経つと複利効果でその差額は無視できないものになります。

追加受注(Negative Churn)の増加

 追加受注は解約の逆現象のことで、一般的にはアップセルやクロスセルを指し、広義にはサービスの継続も含みます。SaaSの場合は、「上位サービスメニューへの乗り換え」や、「オプションサービスの追加購入」を指します。カスタマーサクセスではこれを「ネガティブチャーン(Negative Churn)が発生した」と言います。

 ネガティブチャーンが事業成長において重要なことは説明不要でしょう。しかし、ネガティブチャーンはカスタマーサクセスの業務スコープに含まれる場合とそうでない場合があります。なぜなら多くの場合、ネガティブチャーンの発生にはポストセールスの存在が不可欠だからです。カスタマーサクセスの結果、顧客が提供サービスへの追加投資を判断することはあります。しかし、商談を確実にクローズさせるにはやはりセールス活動は不可欠です。 これらは一般的には以下のように整理されます。

  • カスタマーサクセスのミッション:利用促進と利用深化
  • ポストセールスのミッション:追加提案と追加受注

 そのため、ネガティブチャーンを発生させるための活動がカスタマーサクセスに含まれるかどうかは、各企業の組織づくりへの考え方に左右されます。これについては改めて連載の第5回で説明します。

 以上、チャーンとネガティブチャーンについてその概要を簡単に説明しましたが、より深く知りたい方はこちらを参考にしてください。

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