マーサーの調査によると、世界中のM&A取引のうち43%が、カルチャー(組織文化)の相違が原因で取引の遅延や中止、買収価格へのマイナスな影響を受けているという。加えて67%の企業において、カルチャーの相違によりシナジー効果(相乗効果)の実現が遅れた実態があるとしている。この調査では、過去36ヵ月間に買い手と売り手の両サイドの立場で合計4,000件以上の取引を行った、54ヵ国1,438名のM&Aプロフェッショナルからのアンケートとインタビュー回答を分析している。
マーサーの 『M&Aの価値を高めるためのカルチャー(組織文化)リスク対策- Mitigating Culture Risk to Drive Deal Value』レポートは、次のような点も指摘している。
- 回答者の61%は、「リーダーの発言のみならず、行動」がカルチャー(組織文化)に最も影響を与える事項としている
- 「ガバナンスと意思決定プロセス」(53%)と「コミュニケーションスタイルと透明性」46%)も上位にランクされた
- 生産性の低下や重要人材の離職、顧客の混乱等により、M&A案件の30%において財務目標が達成できていない
またこのレポートは、役割・職務、業界、人員構成、地域等の違いによる回答者の様々な意見や考え方に対し、広範囲な分析をしている。例えば、人事プロフェッショナルはカルチャーの最も重要な構成要素として「コラボレーション(協業)」(69%)や「エンパワーメント(権限移譲)」(64%)と回答しており、経営幹部は、「ガバナンス/意思決定プロセス」(60%)を最も重要なものとしている。
このレポートは、グローバルM&Aに携わる関係者に対し、M&A取引におけるカルチャーリスクについて注意喚起している。それと同時に、以下のの3段階プランを含むカルチャーリスクを軽減する方法に関して、最善と考えられる具体的なアクション・プランを提案している。
- 買収目的とリスクを明確にすること
- カルチャーに関するデューデリジェンス(コンファーマトリー含む)の実施を売り手に対し主張すること
- 特に買収契約締結後100日間は、カルチャーに関する業務を優先し取り組むこと