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“場”から始めるワークスタイル変革

“場所”と“時間”から働き方を改革するABW──会社の業務を「個人の活動」で分解する働き方とは?

第1回

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最も生産性が高い場所と時間と相手を選ぶ働き方“ABW”

 「働き方」とは非常に厄介な単語です。国が進めている「『働き方』改革」の文脈において、「働き方」は賃金や雇用体系といった制度的な内容で語られています。しかし、オフィスをデザインする立場での解釈では、「働き方」は、組織形態や業務プロセス、ITインフラのような「組織的な仕組み」から、ITツールの使い方や会議・作業の進め方といった「行動や文化」まで幅広く包含しています。

 国や企業による制度の変更や導入だけでは、「行動や文化」まで根本的に変えることはできず、働き方は変わらないだろうと私たちは考えています。「残業を制限する法律を作ります。皆さん残業を減らし、生産性を上げましょう(でも成果はこれまで通りでお願いします)」とだけ言われても、自分の労働時間を減らすことは難しいでしょう。

 私たちは、「働き方改革」とは「働く人の行動を変える」ことだと考えています。制度やITインフラ、ツール、オフィスデザインといった「働き方」に関連する要素は、「働く人の行動をどのように変えることができるか」を軸に組み立てていくべきではないでしょうか。

 働く人の行動を変えるための有効な枠組みがActivity Based Working(ABW)です。

 私たちが提唱するActivity Based Working は「自己裁量を最大化し、ワーカー自らが働き方を自律的にデザインする総合的なワークスタイル戦略」のことです。働く人たちがそれぞれの“活動”に合わせて“働く場所”と“時間”を自ら“選択”し、仕事の品質を向上させることで、顧客への提供価値を高めていくという考え方です。

 ABWという言葉を「いつでも、どこでも、誰とでも働く」という働き方という意味で、すでに聞いたことがある人もいるかもしれませんが、私たちが提唱しているABWは、個人や組織の活動をより詳細に捉え、”活動に合わせて”いつでも、どこでも、誰とでも働くという点に重きを置いています。

 ここでいう “活動”とは、業務そのものではなく「その会社で共通の行動の単位」を指します。

 たとえば、「個人作業」や「会議」などがこれにあたります。また「場所を選択する」とは、「家」か「オフィス」のように他の拠点を選択できることだけではなく、オフィスの中でも「集中エリア」や「リラックススペース」のように異なる役割を持つ場所を選択することも含まれています。また「時間の選択」についても、「フレックスタイムで自分の都合の良い時間に働く」という意味だけではなく「就業時間内で、自分の集中量が最も高い時間に集中作業をする」という意味も含まれています。時間、場所ともに、選択肢の幅は広い方がいいのですが、それはその企業の文化や業務内容によっても異なると思います。

 今回のテーマであるABWの重要なポイントは「個人がある活動をするために、最も生産性が高い場所と時間と相手を選ぶ自由がある」ことです。これは、政府が掲げる働き方改革の目的である「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で『選択』できるようにするための改革」とも合致し、今まさに日本で求められている「ワークスタイル戦略」といえます。

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筧田 昭文(トイタ アキフミ)

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