日本は天才や変人を秀才が支える国? マジョリティがより上にいく国?
蛯原健氏(リブライトパートナーズ 代表取締役、以下 敬称略):前編で岡田さんがおっしゃってた、天才や変人にとってストレスの少ないシリコンバレーのそのカルチャー、それをもう少し因数分解できますか?
岡田陽介氏(株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO、以下敬称略):まず、マジョリティの人たちがマイノリティをどう理解しているのか、で違いが出るように思います。日本はマジョリティの人たちがより上に行けるようなスキームを作っている国だというのが、私の理解なんですけど。
蛯原:全体をボトムアップしよう、という感じですか?
岡田:それもありますし、マイノリティに属する変人や天才が応援されにくい印象があります。日本は、マジョリティに属する秀才たちだけで世界を構成しようとしている。一方でシリコンバレーは、秀才たちが会社の運営を担いつつ、天才と変人にお金も与えて好きにさせていますよね。
もちろん、世の中で絶対的に重要なのはマジョリティとなる中間層の人々です。彼らがマーケットを作るし、お金も一番持っている。
その上で、マジョリティが変人や天才を「こいつら、めちゃくちゃすごい!」と評価して、好きなことやらせてみようと考えるのがシリコンバレーの価値観です。お金を持つVCが天才に「とにかくやってみて」とお金を渡し、その天才の周りを秀才の人たちが固め、そこにまた天才が入ってきて、という多層構造がカルチャーを形成しているんです。
グローバルにおいては、こうしたマジョリティとマイノリティの関係が、国や地域エリアごとの特徴を作っていると思います。
蛯原:大企業がオープン・イノベーションに取り組んでいるのに成功しないのはなぜか、という問いに通じますね。オープン・イノベーションは、変人や天才をどう囲って実験やR&Dに取り組んでもらうか、という話ですから。シリコンバレーにおいて変人に色々やらせるというのは、具体的にはどういう感じなんですか?
岡田:堀江貴文さんのいう「多動力」にイメージが近いのですが、変人って取り組むことのことの振れ幅が大きすぎるんですよ。一日経ったら言っていることも変わるし、「え、どうしたの突然?」みたいなこともすごく多い。それに対して特に理由を求めずにやらせてあげると、その人たちは圧倒的な行動力でどんどん何かをかたちにしていくんです。
蛯原:ジャック・ドーシーがTwitterとSquareを同時に経営していても、イーロン・マスクがロケットと自動車を同時に作っていても、「上場会社の経営者は忠実義務があるだろ、一社に集中しろ!」なんて言わずに「全部やるだけやってみな」と言う、そんな環境のことですね。