MaaSとFintechのキーパーソンが語る、事業者間データ連携とオープンイノベーション

 世界中で社会実装が進むMaaS(Mobility as a Service)。日本では、国土交通省が「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会中間とりまとめ概要」としてまとめているが、日本でMaaSを普及させていくためには、多くの課題を解決しなければならない。今回は、日本のMaaSが抱える課題のうち、「事業者間のデータ連携」について、同様の議論を先行して進めてきたFintech業界と比較しつつ解決策を議論していくパネルディスカッションの様子をお届けする。登壇者は一般社団法人JCoMaaSの理事で株式会社MaaS Tech Japan代表取締役CEOの日高洋祐氏、一般社団法人Fintech協会代表理事会長で株式会社インフキュリオン・グループ代表取締役の丸山弘毅氏、Fintech協会代表理事副会長でfreee株式会社執行役員の木村康宏氏、株式会社マネーフォワード取締役執行役員の瀧俊雄氏。モデレーターをFintech協会分科会事務局長でJCoMaaS理事でもある落合孝文氏が務めた。

[公開日]

[取材・構成] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部) [写] 黑田 菜月

[タグ] 事業開発 テクノロジー フィンテック MaaS

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MaaSにおける事業者間データ連携の課題

落合孝文氏(以下、敬称略):MaaSにおける事業者間のデータ連携がFintechと違うところは、「地域によってモデルが異なる」点だと思います。メガバンクと地方銀行の違いなどはありますが、それでもFintechは比較的均一性の高いモデルで成立します。一方MaaSは、鉄道やバス、タクシーなど関係する事業者数が非常に多く、地域横断型、都市部や地方部など、様々なモデルで議論していかなければなりません。多くの事業者が関係してくる中で、事業者間のデータ連携はどのように進んでいくのでしょうか。

日高洋祐氏(以下、敬称略):MaaSのプラットフォームは、基本的には交通事業者ではなく、新しくMaaSオペレータとなる企業が担うことになります。つまり、鉄道やバス、タクシーの事業者が持っている移動データや決済データを第三者が統合するというわけです。データの統合はユーザーにとって大きなメリットになります。しかし、事業者がデータ連携を受け入れるにあたっては「データの信頼性と責任の所在」「MaaSオペレーターを誰がどのような権限で担うか」という2点が課題となります。

 たとえば鉄道業界は、15秒単位でオペレーションを運用しています。鉄道情報が1分違っているだけでユーザーからクレームがくるほど、正確性が厳しく求められているのです。そのような状態である鉄道業者からすると、運行データを第三者に渡し、その先のサービスが間違った情報を表示してしまった場合、誰の責任になるのかという話になります。データの連携をどう進めていくかという議論においては、リアルタイムのデータを扱うのにサーバーが落ちた場合の責任の所在などが焦点となっています。これは金融も同じですよね。もし金融の事業者間連携で1円でも間違えていたら、ユーザーや銀行側はどうなるでしょうか。データの信頼性、責任の所在や信頼性を担保する仕組みは、はっきり線引きしなければならない点であり、関係する事業者が多いほど議論は複雑になります。

 また、MaaSの基盤構築にあたって、鉄道事業者の資本力であれば自社で開発できてしまいます。鉄道会社がMaaSに取り組むにあたって、オープンな基盤を作ってデータを第三者に渡すのか、自社で内製するか、出資先との連携で進めていくのかと、選択肢が複数存在するのです。オープンな基盤を作った方が社会全体としてのメリットは大きいかもしれませんが、一方でいち企業としては「オープンにしなければならない」理由が見当たらないという側面もあります。 オープンな基盤の上にデータが流通し、様々なMaaSアプリが林立する中でいいサービスをユーザーが選ぶ状況を作るためには、交通事業者にもメリットがある形でのMaaSのデータ流通の在り方や関係性の構築が大切になってくると思います。

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